最新記事

イタリア

コロナショックで孤立無援のイタリアが恨み節──加速する反EU感情の行く先

Italians Resent Lack of EU Help

2020年5月28日(木)18時00分
ケネス・ローゼン

コロナ感染でイタリアは戦後最悪の景気後退のさなかにある(写真はコンテ首相) Remo Casilli-REUTERS

<制限解除が進むも経済は戦後最悪に──支援が得られないなか、国内の右派勢力が離脱志向を加速させている>

ロックダウン(都市封鎖)開始から2カ月以上。新型コロナウイルスによる死者が3万2000人を超えるイタリアが、ようやく「完全再開」に向かい始めた。

マスク着用などの規定は今夏末まで継続されるが、6月3日から出入国禁止措置が解除され、国内の移動規制も緩和。既にレストランや理髪店は再オープンし、近くジムやプールも営業再開する。

5月16日、一連の緩和措置を発表したジュゼッペ・コンテ首相は引き続き警戒を呼び掛けつつ、これまでの取り組みをたたえた。「ワクチンができるまで待ってはいられない」。今回の決定について、コンテはそう主張している。

国民が再開を心待ちにする一方で、イタリアは第2次大戦以来、最悪の景気後退のさなかにある。南部が依存する観光業は先行きが暗い。今後数カ月以内に新型コロナウイルスが再流行する懸念があるなか、ソーシャルディスタンス(社会的距離)戦略や移動制限で、工業地域の北部の生産が落ち込む可能性も高い。

痛手を負った企業や世帯を救済すべく、政府は5月13日に550億ユーロ規模の追加の景気刺激策を承認した。

「反独・親中」が広がる

今回の刺激策は連立政権内での合意に長い時間がかかり、ぐずぐずしているうちにマフィアの違法融資が復活しかねないと懸念する声も上がっていた。待望の決定だが、エコノミストらに言わせれば、それでも十分な額ではない。

さらに、パートナー国であるEU各国の支援の動きは鈍い。イタリア国民の間では今、欧州内の他国に見捨てられたという感情が広がっている。

「ヨーロッパへの考えが少し変化した」。ローマ在住の不動産業者マルコ・トンド(34)はBBCの取材にそう発言している。「極度の緊急事態に直面しているのに、各国が背を向け合うなんて」

最近の世論調査では、イタリアのEU離脱を望む人の割合が20ポイント増加。EUを無意味な存在とみる人は59%に上り、回答者の半数近くがドイツは敵で、中国が同盟国だと考えていた。

イタリアは今もEU内第3位の経済国だ。とはいえGDPの落ち込みや今後数年間の経済観測をめぐる懸念、パンデミックへのEU同盟国の対応を受けて、EU懐疑主義が加速しかねない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領が一般教書演説、「米国は黄金時代」と

ワールド

トランプ氏、IT大手にAI向け自社発電所建設を指示

ワールド

香港の経済成長率2.5─3.5%の見通し、財政改善

ビジネス

アサヒ、ビール類で1桁台半ばの売上増計画 「スマド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中