最新記事

ワクチン開発

米モデルナ社のコロナワクチン、初期治験で「有望な結果」 45人の被験者全員が抗体を獲得

Everything We Know About Moderna's Coronavirus Vaccine

2020年5月19日(火)14時28分
ブライアン・カーク

モデルナは世界の救世主となるのか?株式市場がすでに大歓迎しているが Brian Snyder-REUTERS

<従来のワクチンよりも迅速に開発・製造ができるRNAワクチンが臨床試験第一段階で好結果、うまくいけば2021年にも完成か>

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン開発を進めている米バイオ医薬企業のモデルナは5月18日、初期段階の治験で、被験者45人全員に同ウイルスの抗体ができたことを明らかにした。近いうちに安全かつ効果的なワクチンが入手可能になるかもしれないと期待が高まっている。

同社はCOVID-19のワクチン候補「mRNA-1273」の開発を進めている。今回の治験は3月と4月に実施され、18歳から55歳の男女45人が参加した。

第一段階の治験はワシントン州シアトルにあるカイザーパーマネンテ・ワシントンヘルス研究所で行われ、被験者たちは28日間隔で2回にわたってワクチンの投与を受けた。

CNBCの報道によれば、2回目のワクチン投与から約2週間後の治験43日目で、被験者全員が新型コロナウイルスの感染後に回復した人と同程度の抗体を獲得していることが分かった。また少なくとも8人については、ウイルスの増殖を予防する「中和抗体」が確認できたという。

モデルナの最高医療責任者タル・ザクス博士は声明を出し、「今回得られたデータは、mRNA-1273には新型コロナウイルスの感染を防ぐ潜在的可能性があることを実証するものだ」と述べた。投与量が多いほど多くの抗体が作られる傾向にあり、第2段階の治験では投与量を倍にするという。

現在、モデルナをはじめとする5つの製薬会社がCOVID-19のワクチン開発を進めている。

早ければ2021年にも実用化の可能性

5月はじめには、米製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発したレムデシビルがCOVID-19の治療薬として緊急使用を許可されたことが大きく報じられた。だがレムデシビルは実験的な薬で、COVID-19の安全で効果的な治療薬とは考えられておらず、さらなる臨床研究を行う必要がある。

ほかにも、フランスの製薬会社サノフィが開発した抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンなどが、COVID-19の治療薬候補に挙げられている。米食品医薬品局(FDA)は同薬について、COVID-19の入院患者を対象に緊急使用を許可しているが、ヒドロキシクロロキンが治療薬として効果的かどうかは分かっておらず、使用はまだ実験段階にある。

モデルナは1月から米国立衛生研究所と緊密に協力して、マウスを使ったワクチンの開発および試験を行っており、3月に入ってからヒトでの治験に移行した。

一般にワクチンの安全性が確認されるまでには何年もの治験が必要で、米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長をはじめとする一部の科学者は、ワクチンが秋までに完成することはないだろうとの見方を示している。

だが、もしモデルナの今後の治験でも良い結果が続けば、2021年までに安全で効果的なワクチンを実用化することは可能かもしれない。

同社は5月に入って既に、第2段階の治験に進むための承認を得ている。FDAは、モデルナのワクチンをファストトラック(優先承認審査)対象に指定した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中