最新記事

接触追跡アプリ

新型コロナ接触追跡アプリ、ドイツ政府はアップルとグーグル方式に

2020年4月28日(火)18時50分
松岡由希子

各国が接触追跡アプリを採用 写真はオーストラリア Sky news-YouTube

<各国で感染者との接触を検知する「接触追跡アプリ」の開発に取り組んでいるが、ドイツ政府ではプライバシーに配慮したアップルとグーグルの方式が採用される......>

ドイツ政府は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止策として、スマートフォンの機能を用いて感染者との接触を検知する「接触追跡アプリ」の開発に取り組んでいる。

連邦首相府ヘルゲ・ブラウン長官と連邦保健省イェンス・シュパーン大臣は、2020年4月26日、「ドイツの『接触追跡アプリ』には分散方式を採用する」との共同声明を発表した。

プライバシーの保護の観点から批判の声があがった

ドイツ政府では、これまで、データを一元管理する「中央集権方式」による「接触追跡アプリ」の開発をすすめてきたが、従来の方針を大きく転換したことになる。

「接触追跡アプリ」は、スマートフォンに内蔵されている無線通信技術「ブルートゥース(Bluetooth)」を使って新型コロナウイルスの感染者と接触した可能性のある人に感染リスクを知らせる仕組みだ。すでに、シンガポールや韓国、オーストラリアで導入されている。

感染者に接触したかどうかを検出するアプローチとしては、スマートフォン内で行う「分散方式」と中央サーバに集約させる「中央集権方式」がある。「中央集権方式」では、公衆衛生当局が感染状況を把握でき、感染者が確認されると、公衆衛生当局から接触した可能性のある人に通知して、感染リスクについて注意を促すことができる一方、「分散方式」は、感染者が「接触追跡アプリ」を通じて電話番号や症状などを公衆衛生当局に共有したうえで、公衆衛生当局が接触した可能性のある人に通知する流れとなる。

「中央集権方式」には、国民のプライバシーの保護の観点から批判の声が上がっている。独ヘルムホルツ情報セキュリティセンター(CISPA)のキャス・クレーマー教授ら、世界25カ国300名以上の学者グループは、4月19日、透明性の担保やプライバシー保護などの観点から、「接触追跡アプリ」には「分散方式」を採用するよう求める公開書簡を出している。

アップルとグーグルが「分散方式」を開発協力

アップルグーグルは、4月10日、ブルートゥースを活用して感染者と接触した可能性を検出する技術の開発で協力する方針を発表した。

両社が開発している技術は「分散方式」によるものだ。新型コロナウイルスへの感染が確認されたユーザーがその旨を「接触追跡アプリ」に入力すると、過去数日間にこのユーザーに接触した他のユーザーへ通知される。感染者の名前や接触した場所は明らかにされず、アップルやグーグルも特定できない仕組みになっている。

ドイツ政府が方針を転換した背景には、国内外からの批判に加え、従来支持してきたイニシアチブ「PEPP-PT(汎欧州プライバシー保護接近度追跡)」に基づく「中央集権方式」がアップルのスマートフォン「iPhone」で機能しないという技術上の制約があったとみられる。ロイター通信によると、アップルが「iPhone」の設定変更などの対応を拒否したため、「分散方式」に方針転換せざるをえなかったという。

ドイツ政府は、「接触追跡アプリ」が近々リリースされる見通しを示している。この「接触追跡アプリ」は、データ保護やセキュリティが保証されており、その利用は任意であることも強調されている。日本では、シンガポール政府が公開したアプリをベースに開発しているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ外相が「建設的な」協議、首脳会談の準備巡り=ロ

ワールド

米、ガザ停戦維持に外交強化 バンス副大統領21日に

ビジネス

メルク、米国内事業に700億ドル超投資 製造・研究

ワールド

コロンビア、駐米大使呼び協議へ トランプ氏の関税引
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 9
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 10
    トランプがまた手のひら返し...ゼレンスキーに領土割…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中