最新記事

中国経済

中国、新型コロナショックで試される労働者のセーフティネット

2020年4月18日(土)12時16分

労働者の抗議活動

この状況は、低賃金で労働集約的な仕事に就き、公的ヘルスケアへのアクセスが限られている約2億人の農村出稼ぎ労働者にとって特に深刻だ。彼らの多くは工場から締め出され、中国がウイルスを制御するために国の大部分を封鎖したため、都市の境界を越えることを禁じられた。

スタンフォード大学の研究者が推計したところによると、出稼ぎ労働者は今年初めの封鎖によって数週間にわたって労働できなかったため、既に最大1000億ドルの賃金を失っている可能性がある。

封鎖期間中にほぼ中断していた労働者の抗議運動は再燃し、業務が抑制されたタクシー運転手といった労働者による活動が特に目立っている。

オックスフォード大学のフェロー(中国法)、ミミ・ゾウ氏は「世界的に深刻な景気後退が迫っていることを考えると、賃金の未払いや社会保険料の未払いを招くような企業の閉鎖は労働争議を引き起こすだろう」と述べた。

中国の労働争議を監視しているChina Labour Bulletinのデータによると、3月に起きた労働者による集団抗議活動50件のうち、半数がサービス・運輸部門で起きている。中国のウイルス流行中心地である武漢で救急病院の建設に携わった人を含め、建設労働者も補償について抗議した。

販売減でフードコートでの職からレイオフされた北京の女性、ワンさん(56)は、55歳という女性の退職年齢を過ぎているため、契約に失業保険が含まれていなかったという。

ワンさんは「私は仕事ぶりのせいでクビになったのではない。私たちはウイルス流行のさなかにあり、誰の生活も大きな危険にさらされている」と語った。

(Gabriel Crossley記者、Cheng Leng記者)

[北京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルス、モノの表面にはどのくらい残り続ける?
・中国・武漢市、新型コロナウイルス死者数を大幅修正 50%増の3869人へ
・イタリア、新型コロナウイルス新規感染者は鈍化 死者なお高水準
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(17日現在)


20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中