最新記事

中国経済

中国、新型コロナショックで試される労働者のセーフティネット

2020年4月18日(土)12時16分

新型コロナウイルスの大流行により、中国ではさらに何百万人もの人々が職を失い、多くの人々がセーフティネットなしに取り残され、国の失業手当にアクセスできくなる──。複数のエコノミストがこうした見通しを示している。写真は8日の北京の金融街の様子(2020年 ロイター/Tingshu Wang)

新型コロナウイルスの大流行により、中国ではさらに何百万人もの人々が職を失い、多くの人々がセーフティネットなしに取り残され、国の失業手当にアクセスできくなる──。複数のエコノミストがこうした見通しを示している。

アナリストらは、業務再開の停滞と世界的な需要の落ち込みによって、今年は3000万人近い雇用が失われると予想。これは2008─09年の金融危機時における2000万人強のレイオフを上回る規模だ。

中国当局は金融危機が発生してからの10年で失業保険申請プログラムを強化。最新のデータによると、雇用主と労働者の双方が拠出する基金の規模は5817億元(823億7000万ドル)と3倍になっている。

しかし、何百万人もの労働者が失業保険制度に加入していないか、拠出していないため、レイオフされた場合の補償については雇用主に依存せざるを得ない。職を失えば、多くが貯金に頼るか、親族に頼ることになりそうだ。

人事社会保障省によると、今年1─2月に失業保険を受け取った人の数は約229万人。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのダン・ワン氏によると、同時期に推定500万人が職を失ったという。

同氏によると、今年さらに2200万人が失業する可能性があるが、失業手当の受給資格がありそうなのは半数にとどまる見通しだ。

中国国務院(内閣に相当)にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

4月にネイルサロンの仕事をレイオフされた19歳の女性、シュエさんは「北京のような都市は家賃が高く、私には収入がない」と語る。しかし、勤務期間が長くないため、失業保険を申請することはできないという。

失業保険の加入者は、10年間拠出した場合、最大2年間にわたって給付を毎月受け取ることができる。拠出期間が短いほど、給付期間が短くなる仕組みだ。


【関連記事】
・新型コロナウイルス、モノの表面にはどのくらい残り続ける?
・中国・武漢市、新型コロナウイルス死者数を大幅修正 50%増の3869人へ
・イタリア、新型コロナウイルス新規感染者は鈍化 死者なお高水準
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(17日現在)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪6月失業率は3年半ぶり高水準、8月利下げ観測高ま

ビジネス

アングル:米大手銀トップ、好決算でも慎重 顧客行動

ワールド

WTO、意思決定容易化で停滞打破へ 改革模索

ビジネス

オープンAI、グーグルをクラウドパートナーに追加 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 9
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中