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マレーシア

コロナ禍のマレーシアで始まった「ドラえもん大喜利」

2020年4月2日(木)19時39分
海野麻実(記者・映像ディレクター)

「女性は自宅でも化粧をしてきちんと着替えて仕事をしましょう」とのアドバイスに批判のコメントが殺到(ツイッターより)

「どうして、コロナ対策で外出自粛の最中に、家でドレスアップしてお化粧を強いられなければいけないの?教えてください」

「もう2020年です、お願いだから前進してください。女性たちにとってもっと重要な問題にフォーカスしてほしい」

瞬く間に批判の嵐にさらされた女性・家族・社会開発省は謝罪に追い込まれ、投稿をすぐに削除。気分を害された人々に対して今後は注意を払いたいとしたうえで、あくまで「外出禁止令の最中、少しでも平和な家庭環境をどう維持するか」をアドバイスしたかった、と弁明している。

ちなみに、マレーシアでドラえもんは1992年から放映が始まり、今も国民の絶大な人気を誇る。ドラえもんの声はマレー語に吹き替えられ、マレーシア人の女性声優が日本のドラえもんよりもやや高い声で喋っているのが特徴だ。現在でもマレーシア衛星放送最大手「Astro(アストロ)」グループが毎週放送しており、ドラえもんマレーシア版のフェイスブックオフィシャルサイトでは、ドラえもんが全国各地の商業イベントなどに出演し、子供たちに取り囲まれている様子が随時アップされている。

外出禁止令でたまるうっぷん

人気キャラクターのドラえもんを巻き込んだ騒動は、外出制限下で暇を持て余している国民の間に、皮肉とユーモアを交えて拡散されていった。真っ赤な口紅とほんのりピンクの頬紅で化粧を施し、綺麗にカールした黄色いカツラを頭にちょこんと乗せたドラえもんが、小さな手鏡で自分の顔を映しながら「今日のお食事は何がいいかしら?」とコメントしているイラストなど、この騒動に乗じたユーモア溢れるドラえもんのコラージュが次々にネット上に登場。#DoraemonRespectsWomenというハッシュタグもツイッターで広がっている。

しかし、笑ってばかりもいられないようで、女性支援団体のマレーシア支部は即座に女性・家族・社会開発省の投稿が不適切であると強く反発。「これらの標語はジェンダーの不公平を加速させるものであり、古き家父長制の概念を永続させかねないものだ」と厳しく指摘した。

この騒動の背景には、外出禁止令が敷かれて2週間が経った今、散歩やジョギング、自由な買い物なども許されない中で、人々のうっぷんが徐々にたまっているという現実がある。

厳しい外出制限下で家庭内の暴力が増えていることは、今や世界中で報告されはじめている深刻な事態だ。マレーシア地元紙によると、国内では外出制限が始まって以降、DVや児童虐待の被害者ホットラインに2000件近くの電話相談(通常時の2倍以上)が掛かっている。女性への暴力問題に関する国連特別報告者のドゥブラブカ・シモノビッチ氏は、世界各国が外出制限などを呼びかけている環境下で、家庭内暴力が増加する恐れが非常に強いと警告している。

首都クアラルンプールで、保険会社に勤める共稼ぎの50代女性は、ため息交じりにこう呟いた。

「私はある程度広い家に住んでいるので、夫や高校生の子供が終日家にいるようになった今でもそこまでのストレスはまだ感じていないです。ただ、これがもし小さな狭いアパートで子供もたくさんいて、夫の会社も営業停止になり、給与も一時ストップする事態になったとしたら-そのような家庭は現に少なくありません。今後、この状態が長引くことになったらと想像するとただただ、不安がよぎります」

ドラえもんの「どこでもドア」が本当にあれば、マレーシアでDVに悩む人も減るのだが。

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