最新記事

感染症

米情報当局、中国・北朝鮮・ロシアの新型コロナウイルス感染実態把握に苦戦

2020年3月31日(火)17時44分

米情報当局は世界で新型コロナウイルス感染の実態把握に奔走しているが、事情に詳しい米政府筋5人によると、中国、ロシア、北朝鮮では自らの情報収集力に限界を感じているという。写真はコンピュータで作られた新型コロナウイルスのイメージ。ダブリンで作成。2月18日、ロイターに提供(2020年 NEXU Science Communication)

米情報当局は世界で新型コロナウイルス感染の実態把握に奔走しているが、事情に詳しい米政府筋5人によると、中国、ロシア、北朝鮮では自らの情報収集力に限界を感じているという。

2人の関係筋によると、イランについても新型コロナ感染の全容を把握するのは困難な状況だ。ただ、支配階級および一般市民の感染例や死者に関する情報は国営メディアやソーシャルメディアで明らかになりつつある。

政府が厳しい情報統制を敷き、平時でも国の指導部に関する情報収集が難しいこれら4国を、米情報当局は「ハードターゲット」と認識してきた。それでもなお、専門家は、同4国の感染状況が正確に把握できれば、新型コロナの社会や経済への影響を抑える国際的な取り組みを後押しすることになると指摘する。

2013─17年に米海外災害援助室の責任者を務め、エボラ対策にも関与したジェレミー・コニンディック氏(世界開発センター在籍)は「世界の感染多発地域がどこなのか、どの地域で感染が増えつつあるかを、可能な限り正確に、リアルタイムで把握したいとわれわれは考えている」と説明した。

北朝鮮は国内に感染例はないと主張しつつも、国際援助機関にマスクや検査キットを提供するよう要請している。

ある米政府筋は北朝鮮国内の感染の規模については全く分からないと語った。

ロシアでは、6日連続で1日の感染者増加数が最多を記録しており、当局は全土の封鎖を検討している。ロシアは14カ国が隣接し、貿易や旅行のハブでもあるため、感染状況の全容把握は重要性が高い。

ポンペオ米国務長官は前週、ロシアとイランについて正確な情報が不足していることを示唆し、中国は偽情報を拡散していると批判した。

中国については、新たな国内感染が出ていないとの最近の報告について、米国は「一部正しい」と考えている(関係筋)もようだが、中国当局が新型コロナにうまく対応できているかについて、米情報当局はなお懐疑的だという。

コニンディック氏は、中国政府は感染拡大が始まった当初、その深刻さを隠したが、現在は数字を操作している感じはないとの見解を示した。「(感染が)急増し、迅速にそれに歯止めをかけたという意味では、中国は最も成功した国だといえる」としたうえで、「中国の感染者数が本当ならば、中国のアプローチを理解し、適合させることが非常に重要」とした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・「コロナ失業」のリスクが最も高い業種は?
・パンデミックの拡大局面変えるか 新型コロナウイルス抗体検査に希望の光
・コロナ禍のアメリカでひよこがバカ売れ


cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日揮HD、純利益予想を280億円に引き上げ 工事採

ビジネス

日経平均は反落、買い一巡後に調整 ハイテク株安い

ビジネス

出光興産、発行済み株の3.5%・300億円上限に自

ビジネス

午後3時のドルは154円前半、リスクオンで9カ月ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中