最新記事

パンデミック

ついにアメリカでも火がついた新型コロナ危機「数百万人が感染しかねない」と米高官

Coronavirus Could Infect 'Many Millions' if U.S. Is Complacent

2020年3月12日(木)14時40分
スー・キム

「ウイルスは必ずくる」と警告した国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長(3月11日) REUTERS/Leah Millis

<WHOのパンデミック宣言と同時に、欧州からの入国禁止発表やNBA中断、有名人のウイルス感染など、衝撃ニュースのドミノ倒しが>

アメリカでも、COVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大に対する不安が高まっている。これまでに、ワシントン州で24人、カリフォルニア州で3人、フロリダ州で2人、そしてニュージャージー州とサウスダコタ州でそれぞれ1人の死亡が確認され、全米での死者数は31人に達した。

米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の所長で、ドナルド・トランプ大統領が立ち上げた新型コロナウイルス封じ込めのための専門家チーム(タスクフォース)の一員でもあるアンソニー・ファウチ博士は、事態は今後さらに悪化すると警告した。「もし我々が無頓着で徹底的な封じ込めと緩和策をとらなければ感染者は急増し、数百万人にも達するだろう」と、11日の下院監視・政府改革委員会の公聴会で言ったのだ。

<参考記事>トランプはクルーズ船の感染者を下船させたくなかった?

同日夜、ドナルド・トランプ大統領は国民向けのテレビ演説で、新型コロナウイルスへの対応策を発表した。イギリスを除く欧州からの外国人の入国を禁止する。またほぼ同時に、NBAがシーズンの中断を発表した。選手に感染者が出たためだ。俳優のトム・ハンクス夫妻がオーストラリアでの検査で陽性だったことも重なり、一気に危機感が高まっている。


アメリカの感染拡大はこれから

新型コロナウイルスは2019年12月に中国・湖北省の武漢市で発生。以降、世界全体で12万1000人を超える人が感染しており(このうち8万1000人前後は中国での感染者)、これまでに6万6000人以上が回復した。

3月11日には、WHO(世界保健機関)が同ウイルスの「パンデミック(世界的な大流行)」を宣言した。


WHOはツイッターを更新し、「我々はこのウイルスの感染拡大について24時間態勢で評価を行ってきた。同ウイルスの広がりと深刻さが憂慮すべきレベルにあることを危惧しており、対応の不足についても深く懸念している―@DrTedros#COVID19」と述べ、さらにこう続けた。「そのため我々は、#COVID-19はパンデミックと見なせるという評価を下した」

米国内では、少なくとも36の州と首都ワシントンに感染が拡大している。疾病対策センター(CDC)が10日に発表した最新の報告書によれば、米国内で感染が確認された人は900人を超えた。だがファウチは、「今後さらに感染者が増えて、今より事態は悪化する」と、言うのだ。「自分の州には感染者がいないとか、1人しかいないとか、そんなことは関係ない。ウイルスは必ずやってくる。いま自分にできることは何かを真剣に考え始めるべきだ」

報道によれば、チャック・シューマー上院院内総務をはじめとする民主党の上院議員たちは同ウイルスの感染拡大について、国家非常事態を宣言するようトランプに促す書簡を作成中だ。国家非常事態が宣言されれば、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の災害救援基金から400億ドルを引き出して、各州や自治体のウイルス封じ込め対策の支援に充てることができる。

<参考記事>今のアメリカは新型コロナウイルス危機に勝てない?
<参考記事>新型コロナ対策でも「真実」を見ようとしないトランプ(パックン)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ロは「張り子の虎」に反発 欧州が挑発な

ワールド

プーチン氏「原発周辺への攻撃」を非難、ウクライナ原

ワールド

西側との対立、冷戦でなく「激しい」戦い ロシア外務

ワールド

スウェーデン首相、ウクライナ大統領と戦闘機供与巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中