最新記事

中国

コロナ禍は人災

2020年3月9日(月)11時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型ウイルス肺炎が世界に拡大。通常国会における安倍首相 KIM KYUNG HOON-REUTERS

全世界に対し責任があるのは習近平で、一党支配体制による忖度と言論弾圧に諸悪の根源がある。日本が初動に失敗し感染拡大させたのは習近平に対する安倍首相の忖度で、日本国民の命と生活に重大な危機をもたらしている。

コロナ禍の真犯人は習近平

日本のジャーナリストの中に、「習近平を敵視するとは何ごとか、習近平は(コロナの戦場における)戦友である」という趣旨のことを書いている人がいるのを知って驚愕を覚える。

もう何度も多くのコラムに書いてきたが、コロナ禍(新型コロナウイルス肺炎の災禍)の真犯人は習近平で、しかもこれが人災であるということは言を俟(ま)たない。

蔓延した最初の原因は湖北省の省都である武漢市政府が患者の発症を隠蔽したからだ。1月5日に上海市公共衛生臨床センターが「これまでにない新型コロナウイルスだ」と検査結果を発表したのに、武漢政府は「確かに原因不明の肺炎患者はいたが、その問題は既に解決している」として北京に良い顔をしようとした。昨年12月30日には武漢の李文亮医師等が「この肺炎は(2003年の)SARS(重症急性呼吸器症候群)の時のコロナ肺炎に似ている。人‐人感染もする」と警鐘を鳴らしたが、1月1日、武漢公安は李文亮を「デマを流し社会秩序を乱した」として摘発。李文亮自身も新型肺炎に罹り2月7日に亡くなった。

武漢政府が市民の命を重んぜずに北京の顔だけ見ているのは一党支配体制がもたらしたものであり、李文亮を摘発したのは一党支配体制を維持するために不可欠な言論弾圧があるからである。

それでもせめて医師や医療機関の警告を重要視すればいいのに、習近平は武漢市の忖度報告だけを信じて1月17日からミャンマーを訪問し、19日から21日までは春節祝いのために雲南省巡りをしている。   

しかし1月18日、浙江省で同じ肺炎患者が発症したため中央行政省庁の一つである国家衛生健康委員会が動き、SARSの時の功労者であった中国免疫学の最高権威・鍾南山院士率いる「国家ハイレベル専門家グループ」を武漢視察に派遣した。一瞬で「SARS以上の危機がやってくる」と判断した鍾南山は北京にいる李克強総理に報告し、李克強が雲南にいた習近平に知らせて、1月20日、習近平の名において「重要指示」を発布させた。

この瞬間から中国はパニックに突入し、1月23日には武漢封鎖に踏み切ったが、もう遅い。それまでに500万人に及ぶ武漢市民が武漢から脱出し、中国全土に散らばっていった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮「圧倒的な軍事力構築継続へ」、金与正氏が米韓

ビジネス

中国人民銀、国債売買を政策手段に利用も=高官

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ビジネス

米経済、「信じられないほど」力強い=JPモルガンC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中