最新記事

感染症対策

G20首脳、新型コロナウイルス克服に「手段選ばず」 世界で5兆ドル供給

2020年3月27日(金)11時05分

20カ国・地域(G20)首脳は26日、新型コロナウイルス危機を克服するために「手段を選ばない」とし、各国の新型コロナ対策を通じて世界経済に5兆ドルを供給すると発表した。写真はテレビ会議に参加したブラジルのボルソナロ大統領。提供写真(2020年 ロイター)

20カ国・地域(G20)首脳は26日、新型コロナウイルス危機を克服するために「手段を選ばない」とし、各国の新型コロナ対策を通じて世界経済に5兆ドルを供給すると発表した。

この日、テレビ会議を開催したG20首脳は、経済的・社会的損失を最小限に留め、国際貿易での不必要な干渉を回避すると同時に、世界保健機関(WHO)などとともに命を守るために必要なあらゆる健康対策を実施し、資金を供給していくと表明。

アフリカなどの脆弱な国々や難民などに対するリスクを懸念しているとし、グローバル金融セーフティネットや国民健康保険制度を強化する必要があると強調した。

共同声明では「この共通の脅威に対し共同戦線を張ることに強くコミットする」と表明。「健康保護を目的とした緊急措置は、対象が絞られている上、規模も相応で、透明性が高く、一時的なもの」とし、5兆ドル規模の財政政策、経済対策、保証制度に加え、大規模な財政支援を実施していくとした。

今回の声明には、G20が不可欠な医療用品の国境を越えた供給ルートを確保するという、貿易に関する融和的な文言が数年ぶりに盛り込まれた。だが、多くの国で医療用品に課されている輸出禁止措置の解除までは踏み込まず、国際貿易での「不必要な干渉」を回避するとの表明にとどまった。

G20首脳は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行に対し、「あらゆる措置を最大限に活用して支援を必要とする国を助けるよう要請した。

関係筋によると、IMFのゲオルギエワ専務理事は、新型コロナ対策としての緊急融資枠の規模を巡り、当初の500億ドルからの倍増を目指しており、27日に開催される運営方針を決める委員会で検討される見通し。

G20首脳はまた、WHOの対策における資金不足を解消し、その権限を強化するほか、医療用品の製造能力拡大や感染症への対応力強化、臨床データの共有などを実現するとした。

WHOのテドロス事務局長は26日、G20首脳に対し、新型コロナ感染が「飛躍的なペースで加速」していると警告し、「医療用防護具の生産を拡大するほか、輸出規制を撤廃し、公平な分配を確実にするように」と訴えた。

今回、G20が供給を表明した5兆ドルは、世界的金融危機を受けた2009年に世界経済を支援するために供給された額とほぼ同じ。

トランプ米大統領は、G20会合後、各国は危機に立ち向かうため、新型コロナの情報とデータを引き続き共有しあっていると述べた。

ホワイトハウスによると、トランプ氏はマクロン仏大統領と26日に電話で会談し、新型コロナ対策でのG20などを通じた国際協調の重要性で一致した。

G20会合では、原油価格競争を繰り広げるサウジアラビアとロシアの対立は見られなかった。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・欧州当局「新型コロナウイルス、夏に終息の公算小 高温多湿でも活発」
・新型コロナウイルス感染症で「嗅覚がなくなる」という症例が多数確認される
・新型コロナ、急がれる医薬品開発──抗ウイルス薬やワクチンがなかなかできないのはなぜ?


20200331issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ABB、AIデータセンター向け事業好調 米新規受注

ワールド

ロシア、中印の公式声明を重視 トランプ氏の「原油購

ワールド

仏首相への不信任案否決、年金改革凍結で政権維持

ビジネス

BMWの供給網、中国系半導体ネクスペリア巡る動きで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中