最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナと経済危機「アメリカはヨーロッパも救え」

I Am in Italy Amid the Coronavirus Crisis. America Must Act Now—And Act Big

2020年3月16日(月)18時55分
ニュート・ギングリッチ(元米下院議長)

ミラノが封鎖されて3日目の3月12日、観光名所ドゥオーモ(大聖堂)前も閑散 Flavio Lo Scalzo-REUTERS

<元米下院議長で2012年大統領選では共和党候補を目指したN・ギングリッチがコロナ禍のイタリアから説く欧州の危機と、アメリカがやるべきこと>

新型コロナウイルスの感染拡大は、公衆衛生 と経済という2つの面で脅威をもたらしている。

私は今、在バチカン米大使を務める妻のカリスタとともにイタリアに暮らしている。

だからイタリア政府が断固たる措置で感染拡大を食い止めようとしてきたのも目の当たりにしている。経済に大きな打撃をもたらす措置であろうともだ。

イタリア全土ですべての学校が休校となった。すべての教会が閉鎖された(バチカンのサンピエトロ大聖堂もだ)。すべての結婚式と葬式も延期された。すべてのレストランが休業となった。食料雑貨店と薬局以外のすべての商店も休業中だ。

特定の工場の従業員を除き、国民は在宅勤務を要請されている。街にはほとんど人影がない。

こうした措置を過剰反応と言うのは間違いだ。イタリア北部では、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況だ。

最も状況が深刻なのはミラノがあるロンバルディア州で、患者の急増により医療システムへの負担があまりに大きくなっている。ミラノやブレスチアでは病院に患者があふれ、広場に急ごしらえの「病院」が登場した。

人工呼吸器や集中治療室を必要とする患者が事前予想を上回り、医師は一種のトリアージ的な思考を余儀なくされている。最も感染が深刻な地域では医療機器の不足から、医師らが生存の可能性が高いと思われる患者を選んで人工呼吸器を使わせているとの報道もある。高齢だったり他にも病気がある患者は、治療対象にならないかも知れないのだ。

<参考記事>株価暴落「コロナ相場」の裏で起きている、もっと深刻な構造変化とは

イタリアの教訓をアメリカに生かせ

移動規制の影響ははっきりしている上に持続的だ。首都ローマそして第2の都市ミラノでは、第2空港が閉鎖された。メインの空港でも便数は大幅減で、飛んでもほとんど空席という便が多い。

12日にアメリカからローマへの直行便で到着した旅客数は158人だ。観光業はイタリア経済の柱の1つで、昨年、ローマを訪れた観光客は1520万人に上る。コロッセオ(円形闘技場)だけでも1日平均2万1000人が訪れるが、今はそのコロッセオも休業中だ。

アメリカが死者も経済損失も最低限に抑えて今回のパンデミックを乗り切りたいと思うなら、イタリアの教訓は大いに参考になるはずだ。

新型コロナウイルスの大規模な感染拡大が起こることが明らかになってすぐにドナルド・トランプ大統領が中国からの渡航者の入国を制限したのは正しかった。おかげでアメリカ人の生命が救われるとともに、迎撃態勢を整える時間を稼ぐことができた。

アメリカとイタリアの死者数の違いを見ても、アメリカにおける被害がいかに軽く、事態の進行がいかにゆっくりかが分かるだろう。今後は封鎖や休業といった措置を厳格に行うべき段階になるだろう。

<参考記事>日本が新型肺炎に強かった理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、9月米利下げ観測強まる

ビジネス

米GDP、第2四半期改定値3.3%増に上方修正 個

ワールド

EU、米工業製品への関税撤廃を提案 自動車関税引き

ワールド

トランプ氏「不満」、ロ軍によるキーウ攻撃=報道官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「風力発電」能力が高い国はどこ…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中