最新記事

香港

新型コロナウイルスがアパートの配管を通じて空気感染?(香港)

Coronavirus Could Spread Through Pipes in Buildings, Officials Fear

2020年2月12日(水)18時20分
カシュミラ・ガンダー

10階離れて2人の感染者を出した香港・新界のアパート、康美樓に駆け付けた衛生当局者たち(2月11日) Tyrone Siu-REUTERS

<1つの集合住宅で2人目の感染者。1人目の感染者は10階も上の住人だ。配管を共有する34戸の100人以上が隔離施設に移送された>

香港の衛生当局は2月11日、新界にある長康村のアパート「康美樓」から100人以上の住人を避難させたと発表した。新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した住人が2人見つかったからだ。2人は35階建てのアパートの別々の階の住人で、危険な新型コロナウイルスが配管を通して広まっているのではないか、という不安が広がっている。

騒ぎのきっかけは、後から感染が明らかになった62歳の女性の浴室で、封止していない配管が見つかったこと。この女性は、それ以前に感染したもう一人の住人の10階も下に住んでおり、この配管が感染経路かもしれないと疑われた。

香港政府食品・衛生局の陳肇始(ソフィア・チャン)局長によると、3つの別々の部屋に住む入居者4人にも、発熱、乾いた咳、息切れ、呼吸困難といった新型コロナウイルス肺炎の症状が見られたという。

AFP通信によれば、2月11日の朝早く、マスクと白い防護服を身につけた衛生当局者が康美樓に殺到。ウイルスがビル全体に広がっているのかどうかを調べる間、予防的措置として住人は避難させられた。同じ排水管でつながる34戸の100人以上の住人が隔離施設に移された。「感染の正確な経路はまだわからない」と、衛生防護中心(CHP)の黄加慶(ウオン・ジアチン)は念を押す。「飛沫感染や接触感染という普通の経路だった可能性もある」

「自宅にもいられない」

入居者のある女性は、「チャン」という姓だけを名乗ってAFPにこう語った。「もちろん怖いに決まっている」「マスクが足りないので、家族も外出はめったにしなくなった。孫たちも廊下では遊ばせないようにしていたが、今は自宅にもいられなくなった」

今回と似たようなことは、2003年にSARSが流行したときにも起こった。SARS流行の際には、香港のある集合住宅の入居者329人が劣悪な配管を通じて感染し、42人が死亡した。ただし、香港政府運輸・住宅局の陳帆(フランク・チャン)局長は、今回康美樓で起きた新型コロナウイルスの感染例は、SARSの例とは比べられないと、ニューヨーク・タイムズに語った。COVID-19はきわめて新しいウイルスのため、感染ルートはまだ完全に特定されていない。

新型コロナウイルスに当局が注目するようになったのは、中国中部の湖北省・武漢市にある海鮮卸売市場で働く人たちが相次いで倒れた2019年末のことだ。以降、香港も含む中国の感染者数は4万4000人を超え、死者は1113人にのぼっている。

(翻訳:ガリレオ)

<参考記事>マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける
<参考記事>新型コロナウイルスはコウモリ由来?

20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アウディ、戦略見直しで年間販売目標200万台を検討

ワールド

シカゴへの州兵派遣計画に抗議活動 市民数千人が行進

ワールド

北朝鮮の金総書記、特別列車で中国入り 2日午前に北

ワールド

英首相、官邸チーム刷新 シャフィク元中銀副総裁を経
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中