最新記事

人体

「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される

2020年2月6日(木)17時45分
松岡由希子

RobertoDavid-iStock

<「口の中に毛が生える」という極めて珍しい症例がイタリアで明らかとなり、注目を集めている>

「口の中に毛が生える」という極めて珍しい症例がイタリアで明らかとなった。学術雑誌「オーラルサージェリー・オーラルメディスン・オーラルパソロジー・オーラルラジオロジー」(2020年2月号)にその内容が掲載されている

歯肉の異常に厚い組織を通り抜ける毛幹が見つかった

2009年、当時19歳であった女性は、伊カンパニア大学ルイージヴァンヴィテッリを受診した。女性の口腔では、上前歯の裏の切歯乳頭部の歯肉溝上皮から伸びるまつげのような毛が確認され、ホルモン検査や超音波診断の結果、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された。

多嚢胞性卵巣症候群では、性ホルモン値の不均衡によって、顔面や身体で過剰に毛が生える「多毛症」がよくみられる。担当医は、外科的処置によって口腔の毛を除去したうえで、性ホルモン値の不均衡を改善するため経口避妊薬を女性に処方し、4ヶ月後には正常に回復した。

しかし、6年後、25歳になった女性は「経口避妊薬の服用を止めたところ、口の中で毛が生えてきた」と訴え、カンパニア大学ルイージヴァンヴィテッリを再び受診した。女性の顎や首にも相当量の毛が生え、口腔でまつげのような茶色の毛が確認された。

担当医が口腔の毛とその下にある組織を採取し、顕微鏡を使って組織を詳しく観察した結果、歯肉の異常に厚い組織を通り抜ける毛幹が見つかった。1年後には、女性の症状がさらに悪化。左右の歯列弓のより広い範囲で毛が生えていた。

in-extremely-rare-thumb-720xauto-183539.jpg若い女性の口腔で確認された初の事例...... ORAL MEDICINE CASE REPORTS

若い女性の口腔で確認された初の事例

一連の症状の原因についてはまだ明らかになっていない。女性が経口避妊薬の服用を止めると口腔での発毛が再開したことから、多嚢胞性卵巣症候群に伴う性ホルモン値の不均衡によって歯肉から発毛した可能性も指摘されている。

また、胚発生の段階では、口腔の粘膜組織と皮膚を形成する組織が密接に関連していることから、理論上は、口腔でも発毛する可能性はありうるという。

歯肉から発毛した症例は、1960年以降、わずか5例しか報告されておらず、これらはすべて男性であった。若い女性の口腔で確認された初の事例として、注目を集めている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、バイナンス創業者に恩赦=ホワイトハウス

ワールド

プーチン氏「圧力に屈せず」、ロシアに長距離攻撃なら

ワールド

EU、対ロシア制裁対象拡大 中国製油所など3事業体

ワールド

航空便の混乱悪化の恐れ、米政府閉鎖の長期化で=運輸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中