最新記事

新型肺炎

「脳性麻痺の息子がもうすぐ死ぬ」 新型コロナウィルス感染疑われた親の隔離で放置された少年

2020年2月4日(火)17時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

NEWZSPIDER-YouTubeより

新型コロナウィルスによる肺炎の余波が脳性麻痺の少年を死に追いやった。

中国湖北省に家族と住む49歳の男性は、脳性麻痺の長男ヤン・チェン(16)と自閉症の次男(11)とともに同省武漢市で生活していた。春節の休暇を利用して一家で隣の黄岡市に里帰りしたが、ここで発熱が発覚した。

ウイルスに感染した疑いのある男性と次男は、保健当局によって15マイル離れた隔離施設に保護されたが、この時長男は一人で残された。男性は地元の共産党当局に、自分が不在の間に長男を世話するよう頼んだものの、この長男も後に発熱し、感染を恐れた当局によって放置されたと見られる。

ガーディアン紙によると、男性と次男が搬送されてから6日後の1月29日、長男がベットの上で死体となって発見された。

ヤンの叔母も身の安全を守るため、26日以降は訪問できなかったという。

報道によると、男性が不在になった1週間で長男に食事が与えられたのは2回だけ。死因は明らかにされていないが、当局は少年の死について調査を進める方針で、まず、地元の共産党書記と男性が住んでいた村の村長が解任された

SNSで助けを求めたが

香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、ヤンの母親は次男を生んで1年後に自殺している。

父親は自分が隔離された後、不自由な息子の身辺を案じて、ソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」に助けを求める投稿をしていた。

「障害のある息子が2人いて、長男には脳性麻痺があります。彼は自分の体を動かしたり、話したり、自分の世話をすることもできません。長男はすでに6日も一人っきりで、入浴したり服を着替えをさせたり、食事の世話をしてくれる人は誰もいません」

「息子がもうすぐ死ぬんじゃないかと不安です」

しかし男性の訴えも虚しく、長男は亡くなってしまった。男性は、障害者支援の慈善団体や湖北省の担当機関(武漢障害者連盟)にも報告していたという。実は、長男が死亡した同日に、彼を保護する計画があったと後に発覚したが、すでに遅かった。

息子はなぜ死ななければいけなかったのか──地元当局と湖北障害者連盟はコメントを拒否している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、プーチン氏と「2週間以内に」ハンガリー

ビジネス

世界経済は「底堅い」が、関税リスクを織り込む必要=

ワールド

G20財務相会議が閉幕、議長総括で戦争や貿易摩擦巡

ワールド

米ロ外相が近日中に協議へ、首脳会談の準備で=ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中