最新記事

音楽

クイーンの現ボーカリスト、アダム・ランバートが70年代に回帰する理由

Turning to Soul

2020年2月29日(土)15時15分
トゥファエル・アフメド

アルバム発売、ソロツアーやクイーンとしてのツアーがめじろ押し(2月のニュージーランド公演) Dave Simpson-Wireimage/GETTY IMAGES

<新作『ベルベット』はソウルフル――フレディ・マーキュリーの空白を埋める男の意外な路線>

1985年のことだ。クイーンの活動を一時中断していた故フレディ・マーキュリーは初のソロアルバム『Mr.バッド・ガイ』を出した。スタジアムの大観衆を熱狂させるロックとは異質な、ポップとディスコのサウンドだった。

あれから35年。フレディの後継者たるアダム・ランバート(38)が、近く4枚目のアルバム『ベルベット』を出す。その音楽性は、この男もまたフレディと同じ道をたどるのかと思わせるものだ。

ランバートは09年に人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』で準優勝。デビューアルバムがチャート上位に入り、ブライアン・メイとロジャー・テイラーに招かれて「クイーン+アダム・ランバート」を結成した。

ランバートの売りは力強いポップロックだが、『ベルベット』は一転してファンクでソウルフル。昨年9月に収録曲の約半分が『ベルベット:サイドA』として先行発売され、「スーパーパワー」など、70~80年代のプリンスやライオネル・リッチー、ジョージ・マイケルを彷彿させる曲が詰まっている。

最近ビデオ公開された「ローゼス」(3月発売の『ベルベット』に収録)ではシックのナイル・ロジャースとコラボ。少しかすれたミッドテンポのボーカルと熟練のギターさばきの融合は70年代への回帰そのものだ。

大昔の音楽に戻るのは、「聴きながら育った音楽へのラブレター」のようなものだと、本人は言う。「家では両親が70年代のヒット曲のレコードをよくかけていた。僕は自分の歌にもう少しソウルを吹き込みたかった。派手なポップやダンス系じゃなく、自分が音楽を好きになった原点に戻りたかった」

僕らは標的にされている

音楽業界で10年を過ごした今、もはやビリー・アイリッシュやロディ・リッチなどの若いアーティストと競ったり、いつもラジオから流れているような曲の二番煎じはやりたくないと感じている。「音楽業界もトレンドで動く。トレンドの仕掛け人がいて、追い掛ける人がいる。批判はしないさ。流れに乗れば成功するのだから」と言う。

「売れた数やネット配信の回数で成功かどうかを決めるのは簡単だけど」とランバートは言う。「この数年で自分なりの成功の基準ができた。今回のアルバムでの判断基準はこうだ。これは本物か、自分はこれを愛せるか、これで自分は成長したか、の3つだ」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:変わる消費、百貨店が適応模索 インバウン

ビジネス

世界株式指標、来年半ばまでに約5%上昇へ=シティグ

ビジネス

良品計画、25年8月期の営業益予想を700億円へ上

ビジネス

再送-SBI新生銀行、東京証券取引所への再上場を申
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中