最新記事

インドネシア

全長4mのワニ、ドローン行方不明などで救助作戦失敗 「クロコダイル・ダンディ」リベンジ誓う

2020年2月20日(木)17時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

newsweek_20200220_173356.jpg

ワニ捕獲の期待がかかった"クロコダイル・ダンディー"ことマット・ライトだったが...... KOMPASTV / YouTube

捕獲作戦ことごとく失敗した原因は?

今回救助しようとしているワニだが、首にタイヤがはまった状態で最初に目撃されたのが2016年とされ、このままの状態ではワニが成長するにつれて体にタイヤが食い込み、生命の危険にさらされることも十分考えられるとして、生け捕りにしてタイヤを外すことが急務となっていた。

クリス氏が自身のインスタグラムに書きこんだ経過報告などによると、作戦中には何度か当該ワニを目撃して捕獲にあと一歩というところまで漕ぎつけたものの、最終的には全ての作戦が成功しなかったという。

その原因について①パル川にはワニのエサとなるものが多くあり、問題のワニを含めて多くのワニが空腹状態ではなく、エサにあまりおびき寄せられなかった、②作戦が地元メディアなどで大々的に報じられたことなどから昼夜問わず、どこで捕獲作戦を始めても多くの野次馬が押し寄せ大歓声を上げるなどしたためワニが近寄らなかった、③資金不足に陥った、④インドネシア環境森林省との間で決めた「作戦実行期間」が過ぎた、⑤パル川の沿岸は市街地を除くと鬱蒼したジャングルで作戦が困難な環境である、ことなどを挙げている。

捕獲作戦に参加した専門家2人のうち、クリス氏はすでにパルを離れ、オーストラリア・ダーウィンに戻っており、マット・ライト氏も間もなく帰国するという。

今後も作戦は継続

地元中部スラウェシ州、パル市の自然保護局はこれまで何度も専門家などの協力を得て当該ワニの捕獲を試みてきた。しかしいずれも失敗し、1月からは懸賞金付きで挑戦者を公募したが、これもワニを生け捕りにしてタイヤを外すという「危険な仕事」であることから応募者がゼロで、懸賞金を取り下げて新たな捕獲方法の検討に入っていた。

その矢先にオーストラリアから専門家2人が名乗りを上げて森林環境省の正式の許可を得て2月11日から現地入りして捕獲に乗り出していた。

地元関係者によると、2人は豪・ダーウィンからジャカルタ経由で現地パルまでの航空機の費用などは全て自腹で、懸賞金目当てではなく純粋にワニを心配した結果の助太刀だったという。

マット氏は今後の計画としてクラウドファンディングで費用を募り、5月に再挑戦する方針を明らかにしている。そして「それまでの間誰も当該ワニの捕獲を試みないでほしい。何度も継続して捕獲しようとするとワニにストレスを与えてワニが凶暴になる恐れがある。そうなると川の流域に住む人々にとって危険なワニになる可能性があるからだ」と説明している。

さらに5月までの間「オーストラリアで銛を使った捕獲方法などを実際のワニでさらに訓練して、5月には必ず目的を達成したい」と意気込みをみせているという。

マット氏によると問題のワニは「とても健康的で肥っており、エサも十分にあるようだ。なおかつ罠に簡単にはかからないように頭がいい。パル川に生息するワニのボス的存在かも知れない」と語り、捕獲の難しさを強調する。

その一方で「私の辞書に"疲れ"という言葉はない。何度でも挑戦する」として、クロコダイル・ダンディとしての意気込みと意地をみせている。

それだけに現地パル市でも5月にも始まる予定の捕獲・救出作戦第2弾に関心と注目が高まっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

再送-サブサハラ・アフリカ地域の国内借り入れにリス

ワールド

米軍、カリブ海で「麻薬船」を新たに攻撃 生存者いる

ワールド

ブラジル経済活動指数、8月は前月比0.4%上昇 予

ワールド

G20、途上国の債務問題に焦点を当て続けると宣言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 7
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 10
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中