最新記事

テクノロジー

3年前に亡くなった7歳の娘と「再会」 韓国、VRを使ったテレビ特番が賛否呼ぶ

2020年2月23日(日)16時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

進化したVRは、自閉症の人びとや家族を亡くした人のためのメンタルケアに使われだしている。写真は韓国MBCのVRヒューマンドキュメンタリー「あなたに会えた」 MBClife / YouTube

<テクノロジーの発達で、VRはエンターテインメントの世界から、人びとの心のケアにも活躍しはじめている>

ヘッドセットとゴーグルを付け、誰でも簡単に仮想現実の世界へ入って行けるVR。いまやその技術はエンターテインメントにとどまらず、様々な場面で活かされている。

先日、画期的な実験が報道され話題となった。イギリス・ニューカッスル大学の専門家チームとThird Eye Neuro Tech社とが共同で開発したVR「Blue Room」は、自閉症の人が現実世界で感じる不安を改善させることに成功した。VRの中で様々なことを事前に体験することによって、こだわりが強く少しでも予想していないことに恐怖心をもちやすい自閉症の人の不安を解消することに役立つのだという。

また、日本でも昨年の世界自閉症啓発デーには、福岡県で市民らにVRを用いた自閉スペクトラム症をもつ人特有の視覚現象を体験し、どのように見たり聞こえたりしているか理解するイベントを行った。先月17日には茨城県つくば市内でも45校の小中学校の特別支援教育コーディネーターを集め、同様の疑似体験をする催しも行われている。

このようにVRは活躍の場をどんどんと広げている。お隣の国、韓国では先日VRの新たな試みを放送し、多くの視聴者の感動を呼んだとして話題となった。

VRで3年前に亡くなった娘と「再会」

今月6日韓国で放送された「MBCスペシャル特集-VRヒューマンドキュメンタリー"あなたに会えた"」は、放送終了後から大きな反響を呼んだ。SNSや動画サイトでもすぐにアップロードされ拡散されたため、もしかしたらご存知の人もいるかもしれない。

番組の内容は、2016年に3年前に血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:通称HLH)を発症し、7歳で亡くなってしまったカン・ナヨンちゃんとその家族、主に母親との再会の話だ。

ナヨンちゃんは発症後、ただの風邪だと思い病院を受診したところ、難病が発覚し入院。その後たった1カ月で帰らぬ人となってしまった。家族は3年以上たった今でもナヨンちゃんの事を思い続け悲しみに暮れている。そんな家族を少しでも救えるのではないかと、MBC放送局はVR業界韓国内最大手である「VIVEスタジオ」社と手を組み、ナヨンちゃんと母親を仮想現実の中で再会させる計画を開始した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY連銀総裁、年内追加利下げを支持 労働市場に減速

ワールド

ロシアのガソリン供給、20%減少した可能性=ゼレン

ビジネス

台湾輸出、9月は予想に届かず 米国向けは51.6%

ワールド

インタビュー:日銀の追加利上げ慎重に、高市氏は「緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ「過激派」から「精鋭」へと変わったのか?
  • 3
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示す新たなグレーゾーン戦略
  • 4
    ヒゲワシの巣で「貴重なお宝」を次々発見...700年前…
  • 5
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 6
    インフレで4割が「貯蓄ゼロ」、ゴールドマン・サック…
  • 7
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 8
    「それって、死体?...」新婚旅行中の男性のビデオに…
  • 9
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 10
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中