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米外交

中東介入を止められないアメリカの悪癖が、中国の台頭を許す

AMERICA’S DEBILITATING MIDDLE-EAST OBSESSION

2020年1月30日(木)11時00分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

過去の中東介入と同じく、トランプの対イラン政策は見事に逆効果だった。イランはウラン濃縮活動を無制限に進めると発表。アメリカがイランに制裁を科すなかで、中国は民間企業を通じてイランの石油やガス部門に巨額の投資を行っており、イランとの関係は深まる一方だ。

トランプ政権がすぐに方向転換する可能性は低い。今はインド太平洋地域を「カリフォルニアからキリマンジャロまで」の表現でペルシャ湾を含めて再定義している。これにより、中東への介入はアメリカの外交目標にかなうという口実をつくり出した。

アメリカが中東の「終わりなき戦争」に足を取られている限り、中国の脅威に対処することはできない。トランプはそれを知っているはずではなかったか。自滅的な中東介入がこのまま続けば、トランプが掲げる自由で開かれたインド太平洋地域の構想は信頼を失う。

©Project Syndicate

<本誌2020年2月4日号掲載>

【参考記事】米イラン危機で漁夫の利を得る中国
【参考記事】米イラン対立、それでも報復が実行される理由

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