最新記事

日本政治

福島第一原発の汚染水どう処理? 五輪前に問われる安全性

2020年1月29日(水)10時35分

福島第一原発3号機。1月15日、福島県大熊町で撮影(2020年 ロイター/Aaron Sheldrick)

地震による津波ですべての電源を失い、炉心溶融(メルトダウン)事故を起こしてからまもなく9年、福島第一原発では今も防護服に身を包んだ作業員ががれきを撤去していた。

ロイターは1月中旬、現地を取材した。放射線量が極めて高いエリアでは、遠隔操作の大型クレーンが排気筒を解体する一方、使用済み燃料の取り出しが進められていた。次々と増える汚染水の貯蔵タンクにも案内された。

作業に従事する約4000人は、多くが防護服を着ている。しかし、350平方メートルの広大な敷地の9割以上は放射線量が低いとされ、特別な装備は不要という。

記者は写真撮影を厳しく制限され、作業員と話すことを禁じられた。

解体作業は10年近く進められているが、東京五輪・パラリンピックの開催を半年後に控え、福島原発の安全性に改めて関心が集まっている。

「トラブルなどが発生した場合には、悪い情報も含めて速やかに発信するようにしている」と、現地で取材に応じた東京電力のリスクコミュニケーター、二本柳鑑氏は語った。「原因などについては、可能なかぎり説明して、対策をその都度実施している」

解体作業の障害になっているのが、溶けて固まった燃料デブリの冷却などで発生した汚染水。解決までに数十年かかるとみられるこの問題は、周辺国を不安がらせている。

日本政府は2019年12月、汚染水の処理対策として、希釈して海に放出する、大気中に蒸発させる、その併用の3案に絞ることを有識者委員会に提案した。

数カ月以内に結論が出ても、完了までには何年もかかると専門家は指摘する。

「オリンピックに向け、地元にだけでなく、海外、とりわけ外国から来る人たちに情報を公開する必要があると考えている」と、東京電力広報室の原城二氏は言う。

東京電力は英語でフェイスブックとツイッターを始めている。韓国語と中国語でも情報提供を準備しているという。

韓国は東京五輪に参加する選手団のために放射能測定器を用意し、食材を日本に持ち込む計画を立てている。

野球とソフトボールは原発から約60キロ離れた福島市で行われる。聖火リレーは、約20キロ離れたJヴィレッジからスタートし、原発の近くも通過する。

サッカーのトレーニング拠点として再開しているJヴィレッジは、事故後に対応拠点として使われた。環境保護団体のグリーンピースは昨年12月、この周辺で国の除染基準を超える放射線レベルの地点が見つかったと発表した。

安倍晋三首相は東京五輪の招致演説で、第一原発の事故は「アンダーコントロール(制御状態にある)」と宣言した。

日本政府は2016年、第一原発の廃炉や除染、賠償などの総費用は、21兆5000億円になるとの見通しを示した。年間の国家予算のおよそ5分の1に相当する。

(翻訳:久保信博、編集:山口香子)

Aaron Sheldrick

[大熊町 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米印貿易合意、3月に署名へ 印商工相が見通し

ワールド

インドネシアGDP、25年伸び率は5.11% 3年

ビジネス

独VW、中国車両の大半を小鵬と共同開発の新技術で生

ワールド

米ロ核軍縮条約失効、新たな軍拡競争の懸念 中国が対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中