「イラン核合意破棄」は回避できるか 独英仏、米イラン仲裁に奔走
イランとの対話余地も探る
欧州の外交筋らは、武力衝突に向かうのを阻止するのが最優先課題だとしながらも、トランプ政権の予測不可能な行動を懸念する。また、核合意を守らせるためイランに差し出せる「アメ」が乏しいことも承知している。
フランスは過去に、米国の制裁による影響を和らげるためイランに与信枠を提供する可能性に言及した。また英独仏は人道物資や食糧の取引を目的とする決済制度を導入したが、1年を経ても実用化されていない。
イランが核合意を維持する上で本当に望んでいるのは制裁解除と石油の自由な輸出だが、それはかなえることができていない。ソレイマニ司令官の殺害で、可能性はさらに遠のいたようだ。
選択を迫られた場合、欧州諸国はトランプ政権側に付く以外の道がほとんどないかもしれない。
実際、英独仏は共同声明で、中東地域でのイランの「負の役割」をいさめる一方、米国によるソレイマニ司令官殺害には触れなかった。これは米政権を満足させるかもしれないが、イランの怒りを買う内容だ。
ある西側外交官は「英独仏の反応を見ると、米国側ににじり寄っている。この路線を変えるとは思えないが、イランとの対話余地も残す必要がある。問題はタイミングだ」と語った。
欧州側はイランに対する「ムチ」も検討している。
核合意に含まれる「紛争解決手続き」が発動されると、イランへの圧力が高まり、15年に解除された国連制裁の復活に近づく可能性がある。
高官らによると、10日にEU緊急外相理事会が設定されていることで、早ければ今週内にも手続きが発動される可能性がある。しかしイラン側がどう反応するかは不明で、トランプ政権がそれで満足するかどうかも定かではない。
[ロンドン/パリ/ブリュッセル ロイター]
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