最新記事

感染症

新型肺炎の感染はタイ、フィリピンにも ASEAN各国、春節休暇で厳戒態勢へ

2020年1月23日(木)17時53分
大塚智彦(PanAsiaNews)

到着便の乗客をサーモグラフィーでチェックしているフィリピンの空港職員 REUTERS/Eloisa Lopez

<日を追うごとに感染者が増加する中国の新型肺炎。中国からの労働者などが多い東南アジア各国は水際対策に躍起だが......>

中国湖北省武漢を中心に感染者が拡大している新型コロナウイルスについて中国側は1月23日までに死者17人、感染者571人と発表。感染は武漢以外の中国国内都市でも確認されるなど拡大の一途をたどる極めて深刻な状況となっている。

1月25日からの春節(旧正月)に伴い、中国人や外国人観光客の大規模な移動による感染者の入国を水際で阻止しようと、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国は、国際空港で中国からの到着便乗客の体温検査などを強化している。

これまでのところタイで感染の疑いが濃厚な患者が4人発見されているほか、フィリピンでも感染の可能性がある男子が入院して隔離されているなど、感染者あるいは感染の可能性のある患者の数は限定的だ。

しかし25日に向けて中国から東南アジアの観光地などを訪れる中国人や各国の華人社会にいる親戚知人を訪問する中国人が急増することが予想されている。

さらに、シンガポールを除く東南アジア各国の医療機関で、通常のインフルエンザや今回の武漢が発症地とされる新型コロナウイルス、さらに新型とは異なるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)など他のコロナウイルスとの見極めが高い確度で判定できるかといえば、高度の医療設備や専門家が限られていることからかなり難しいのも事実で、各国政府は頭を抱えながらの対策に追われいるというのが現実だ。

フィリピン、タイで感染確認

フィリピン保健省は23日までに、1月12日に武漢から英語学習のために母親とセブ島を訪れていた中国人男子(5)がフィリピン入国前から咳やのどの痛み、発熱を訴えていたことからセブの病院に収容しコロナウイルスの検査を行ったところ新型の可能性があるとの診断結果がでたことを明らかにしている。

しかしその確認されたコロナウイルスが今回拡大懸念のでている新型であるかどうかは検査をしたフィリピン熱帯医学研究所では最終的に判断できないという。このためオーストラリアの研究機関にこの男子の検体データを送って検査を依頼、最終的な検査結果の報告を待っている状態としている。

タイではこれまでに中国人女性2人と2019年12月に武漢を訪問して帰国、発熱を訴えていたタイ人女性が1月22日に感染が確認されたほか、南部の観光地プーケット県の病院で肺炎を治療中だった英国人男性(32)の感染が伝えられており、今後も感染者が増加するのではないかと政府や保健当局は対応策に取り組んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのガザ支援措置、国連事務総長「効果ないか

ワールド

記録的豪雨のUAEドバイ、道路冠水で大渋滞 フライ

ワールド

インド下院総選挙の投票開始 モディ首相が3期目入り

ビジネス

ソニーとアポロ、米パラマウント共同買収へ協議=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中