最新記事

弾劾裁判

トランプの弱みを握るボルトン、弾劾裁判で証言か

Mitch McConnell Says He Doesn't Have Enough Votes to Block New Witnesses

2020年1月29日(水)17時50分
クリスティナ・チャオ

トランプにクビにされたボルトンがトランプ有罪の証拠を握っている Jonathan Ernst-REUTERS

<共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は1月28日、内々で共和党の上院議員たちにこう語ったという。民主党がボルトンを証人として招致するのを止めるのに必要な票数が確保できない、と──>

1月28日午後、ドナルド・トランプ米大統領の弁護団が冒頭陳述を行った後、米上院で多数派を握る共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は非公開の会合で、現段階では民主党の証人招致を阻止できないと話したという。この会合の内容を知る共和党の情報筋が、APとフォックス・ビジネスに語った。

新たな証人を承知するか否かで共和党と民主党が争うさなかに飛び出した発言だ。もし本当なら、トランプに不利な証拠を握るとみられるジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)などの証人が弾劾裁判に出ることになる。上院における弾劾裁判の証人招致をめぐる採決は、数日中に実施される予定だ。

<参考記事>ボルトン解任はトランプにしては賢明だった

民主党が弾劾裁判でボルトンなどの証人に証言させるためには、共和党上院議員4名からの賛成票が必要だ。造反しそうな共和党議員も既に何人かいる。ミット・ロムニー上院議員とスーザン・コリンズ上院議員は、証人招致もやむをえないと示唆している。

迅速な裁判と無罪判決を第一にめざしてきた共和党とトランプの弁護団は、最近さらなる圧力にさらされている。近く刊行予定のボルトンの回想録の中に、トランプに不利な記述があることが報じられたのだ。

それによれば、トランプは2019年8月にボルトンに対し、大統領選のライバルになりそうなジョー・バイデン前副大統領など民主党候補の調査にウクライナの当局者が応じるまで、ウクライナに対する3億9100万ドルの軍事支援を引き続き凍結したいと述べたという。

この内容が確認できれば、トランプの罷免を求める民主党側の主張を裏付ける材料となる。

ボルトンは、議会に求められれば証言に応じると言っている。トランプが現在と過去の側近に対して、弾劾裁判に協力するなと命じているにもかかわらずだ。トランプは今回の弾劾裁判を「でっちあげ」であり「魔女狩り」と繰り返し非難している。

ボルトンが回想するトランプとの会話の内容は、トランプ弁護団の主張と矛盾する。弁護団は、トランプは見返りを目的に援助をしたことはない、と主張してきた。

こうしたトランプとボルトンの主張の食い違いは、アメリカ有権者の疑念を呼び、真実を知りたいという思いをかきたてている。クイニピアック大学が1月28日に発表した最新の世論調査では、有権者の圧倒的大多数(75%)が、上院は証人招致を認めるべきだと回答した。調査対象者の回答は、支持政党の主張におおむね沿っている。 証人を招致すべきだと回答したのは、民主党支持を自認する人では95%、共和党支持者では49%、無党派層では75%だった。

トランプの弁護団は、ボルトンの証言を認めることに対して警告を発してきた。ボルトンの発言は「証拠にならず」、裁判にさらなる混乱をもたらすおそれがあるという。トランプへの圧力が高まることは確かだろう。

<参考記事>退屈過ぎる弾劾裁判だが、裁かれるべきはトランプの行動の是非

(翻訳:ガリレオ)

20200204issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月4日号(1月28日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集。声優/和菓子職人/民宿女将/インフルエンサー/茶道家......。日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの知られざる物語から、日本と中国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中