最新記事

トランプ弾劾

退屈過ぎる弾劾裁判だが、裁かれるべきはトランプの行動の是非

2020年1月28日(火)15時30分
ジム・ニューウェル(スレート誌政治記者)

弾劾裁判で新しい証拠が一切出てこないようにするのが共和党の戦略だ U.S. SENATE TV-HANDOUT-REUTERS

<民主党の主張に「新たな情報は何も含まれていない」と口を揃える共和党議員――退屈して立ち上がって体を動かしたり、トイレに行ってなかなか戻らない議員も......>

米上院で始まったトランプ大統領の弾劾裁判。1月22日、検察官役を務めるアダム・シフ下院情報特別委員長(民主党)の冒頭陳述が始まると、共和党上院議員の多くが同じ反応を示した。民主党の主張には全く新味がない、というのだ。

弾劾裁判は議会の上院で行われ、上院議員たちが陪審員の役割を務める。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領の罷免が決まる。

シフの冒頭陳述が始まって数時間後、休憩時間に報道陣の前に姿を現したテッド・クルーズ共和党上院議員はこう述べた。「冒頭陳述はまだ始まったばかりとはいえ、早くも見えてきたのは、民主党が同じ主張を延々と繰り返すだけだということだ」

ほかの共和党上院議員たちも口々に、冒頭陳述に新しい情報は含まれていないと批判した。議員たちは自分からわざわざ報道陣の前に歩み寄って、コメントを述べた。つまり、皆が党の方針に従って示し合わせたメッセージを発しているのだろう。

こうした共和党政治家たちの指摘が完全に間違っているわけではない。実際、冒頭陳述の内容の多くは、シフが数カ月前から主張してきたことと変わらなかった。

冒頭陳述は、24日まで3日間にわたり行われた。議員たちは、その初日に早々と退屈し始めていた。議場の様子は、長距離便の旅客機の客室のようだった。立ち上がって体を動かす議員や、落ち着きなく周囲を見回す議員もいたし、議場内を「散歩」する議員や、トイレに行ってなかなか戻ってこない議員もいた。

昨年、トランプ弾劾の理由になったウクライナ疑惑が発覚して以来、この問題をずっと追い続けてきた議員たちにとって、冒頭陳述の内容が既に知っていることばかりで退屈だというのは理解できる。しかし、本当に重要なのは、議員たちがその「既に知っている」情報をどのように評価するかだ。

いま本当に問うべきこと

冒頭陳述に新味があるかないかをことさら論評する共和党議員たちは、それを口実に、自分たちが判断しなくてはならないことから逃げている。議員たちの役割は、トランプの取った行動に問題があったのかなかったのかを判断することのはずだ。

これまで共和党議員たちは、大統領の罷免が相当だと判断するに値する証拠と向き合うことを巧みに避けてきた。この状況は、トランプにとって極めて不利な証拠が新たに出てきても変わらないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、主力株の一角軟調

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー

ワールド

中国財政政策、来年さらに積極的に 内需拡大と技術革

ワールド

北朝鮮の金総書記、巡航ミサイル発射訓練を監督=KC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中