最新記事

日本

目立たないが軍事的重要性を増す日本の海保

The Ever-Evolving Importance of Japan’s Coast Guard

2019年12月16日(月)17時05分
ミナ・ポールマン(MIT政治学科博士課程)

今後も海上保安庁は東シナ海における中国のグレーゾーンな活動に対抗する役割を担うことになるため、日本政府は、技術および情報を含む、海上保安庁の防衛における間隙を埋めようとしている。

12月9日、海上保安庁は機密情報の漏洩のおそれを取り除くために、中国製ドローンの調達や活用を2020年度から見送る方針を決めたと報道された。中国製ドローンは価格と機能において競争力があるため、これまで救難や警戒監視に活用されてきた。

この決定は、中国の民間企業が国家と従属関係にあるのではないかという懸念だけでなく、アメリカと足並みをそろえたい意向を反映するものだ。アメリカはすでに米国防総省による中国製ドローンの購入と使用を禁止している。

さらに海上保安庁は11月上旬、北朝鮮のものとみられる木造船の漂着に対応するために、青森県鰺ケ沢町に「機動監視部隊」を設置した。この部隊は不審な漂着船の増加に対する住民の不安を払拭するために、陸上から常駐で沿岸部を監視し、地元当局との情報共有をめざしている。

機動監視部隊の設置以前、木造船の漂着に対処する海上保安官は青森市から現場に何時間もかけて陸路で向かっていた。だが新体制のもとでは、常時巡回・監視が行われるようになったため、目撃情報に迅速に対応できるようになった。青森県の日本海側沿岸部に木造船が漂着する事件は16年には8件だったが、18年には51件に急増しており、住民の不安が高まっていた。

海上保安庁は地理的には中国から北朝鮮まで、機能的には脅威に対する反撃から一般市民を安心させることまで、日本の国家安全保障のあらゆる分野に関わっている。

中国製ドローンの使用に関する政策変更と新しい機動監視部隊の設置から、海上保安庁が日本の防衛において今後も多面的な役割を果たしていくことは明らかだ。

(翻訳:栗原紀子)

20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「MSNBC」が「MS NOW」へ、コムキャスト

ビジネス

米8月住宅建設業者指数32に低下、22年12月以来

ワールド

ハマス、60日間の一時停戦案を承認 人質・囚人交換

ワールド

イスラエル、豪外交官のビザ取り消し パレスチナ国家
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する現実とMetaのルカンらが示す6つの原則【note限定公開記事】
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中