最新記事

米朝関係

北朝鮮、東倉里の発射場で「非常に重要な実験に成功」 トランプ「すべて失う」と警告

2019年12月9日(月)08時38分

北朝鮮の朝鮮中央通信は8日、東倉里の西海衛星発射場で「非常に重要な」実験が行われたと伝えた。写真は2016年に朝鮮中央通信が提供した西海での新型エンジン実験の写真。(2019年 ロイター)

北朝鮮は8日、東倉里の西海衛星発射場で「非常に重要な」実験に成功したと発表した。これに対し、トランプ米大統領は、敵対的な行為を再開すれば金正恩朝鮮労働党委員長は「すべて」を失う恐れがあると警告し、非核化の必要性を強調した。

トランプ氏はツイッターに「金委員長は、敵対的な行動に出るにはあまりにも賢明だ。そうした行動をとれば、あまりに多くのものを失う。実際、すべてを失うだろう」と投稿。昨年開いた金委員長との初会談を引き合いに出し、「金委員長はシンガポールで力強い非核化合意に署名した」と指摘した。

その上で「米国大統領との特別な関係を台無しにしたり、11月の米大統領選の妨げになったりすることはしたくないだろう」とけん制した。さらに「金委員長の指導の下、北朝鮮には多大な潜在的経済力がある。しかし、約束通り非核化しなければならない」とも強調した。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、「大きな意義のある実験の成功」を報じたが、詳細は明らかにしていない。米当局者は以前に、北朝鮮が西海衛星発射場の閉鎖を約束したと明らかにしている。

専門家は、北朝鮮が実施したのはミサイル発射ではなく、ロケットエンジンの静止試験の可能性が高いとみている。

米国科学者連盟の非常勤上級研究員アンキット・パンダ氏はツイッターで「地上でのエンジン試験の公算が大きい。発射試験ではない」との見方を示した。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の核問題専門家バイピン・ナラン氏は「新たな固体燃料や液体燃料のエンジン静止試験だったとすれば、外交の扉が急速に閉ざされる新たなシグナルだ」とし、「来年に起こり得ることを予兆させる非常に確かなシグナルの可能性もある」と述べた。

<再び高まる緊張>

北朝鮮は非核化を巡る対米交渉の期限を年末に設定し、米国が一方的な非核化要求を撤回しなければ、「新たな道」を選ぶ可能性があると警告している。

北朝鮮の金星国連大使は7日、非核化は米国との交渉のテーブルから外れたとし、米国との長期にわたる協議は必要ないとの認識を示した。

KCNAは8日の報道で「最近の重要な実験の結果は、近い将来に北朝鮮の戦略的位置付けを再び変える上で重要な効果をもたらす」とした。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は8日、CBSのインタビューで、北朝鮮が核実験の再開を準備している可能性があるかとの質問に対し、「そうだとすれば過ちだ」と指摘。「(核実験を再開すれば)同国にとって良い結果にはならないだろう。北朝鮮が約束と違う道を選択すれば、米国には多くの手段がある」と述べた。

北朝鮮は2017年9月を最後に核実験を行っていない。

KCNAは今月4日、朝鮮労働党が今月下旬に中央委員会総会を開催すると報じるとともに、金委員長が同国の聖地とされる白頭山を再び白馬で訪れた写真を公開した。こうした動きは重要な発表の前に見られることが多い。[nL4N28E1IZ]

「新たな道」が何を指すのか北朝鮮は明確にしていないが、専門家は可能性の1つとして宇宙衛星の打ち上げを挙げていた。衛星打ち上げにより、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)のようにあからさまな軍事的挑発に出ることなく、ロケットの能力を試すとともに誇示することができる。

元韓国海軍士官で慶南大学教授のKim Dong-yub氏は、北朝鮮が固体ロケットエンジンの試験を行った可能性があると指摘した。固体エンジンを使用すれば、ICBMを隠しておき、発射時に短時間で移動させることが可能になる。同教授は「北朝鮮はすでに『新しい道』に入っている」と述べた。

<可逆的措置>

トランプ米大統領は昨年6月に開いた金委員長との初会談後、北朝鮮がミサイル施設1カ所の廃棄を約束したと記者団に述べた。その後、米当局者の話から、廃棄を約束したのは西海衛星発射場であることが分かった。

首脳会談後、専門家らは衛星写真を基に、同発射場で一部の主要設備が廃棄されているとしていたが、物別れに終わった2回目の米朝首脳会談後、北朝鮮が同発射場の復旧を進めていることを示す映像が明らかになっていた。

米CNNは、5日に撮影された衛星写真で同発射場に新たな動きが見られ、大型の輸送コンテナも写っていると報道。専門家は近く実験が行われるとの見方を示していた。

MITのナラン氏は「これは『非核化措置』として廃棄されたはずの発射場だ」とし、「今回の実験は『再核化(renuclearizing)』の最初のステップだ。可逆的な措置が実際に元に戻されつつある」と述べた。

*内容を追加しました。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ453ドル安 原油高と雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 4
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 10
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中