最新記事

ウクライナ疑惑

トランプ弾劾は可能か? 見解分かれる法学者、下院司法委で議論開始

2019年12月5日(木)09時56分

米議会下院司法委員会は4日、トランプ大統領(共和党)のウクライナ疑惑を巡る弾劾手続きで憲法学者らを招き公聴会を開いた(2019年 ロイター/LOREN ELLIOTT)

米議会下院司法委員会は4日、トランプ大統領(共和党)のウクライナ疑惑を巡る弾劾手続きで憲法学者らを招き公聴会を開いた。民主党が招いた法学者3人はトランプ氏の行動は職権乱用や議会妨害、司法妨害などに当たるとし、弾劾可能との見解を示した。

共和党が招いた法学者は、民主党が主導する弾劾調査は「ずさん」で「急場しのぎ」的なもので、問題とされている出来事に直接触れている人物からの証言を得ていないと指摘。これまでに集められた証拠はトランプ氏が「明確な犯罪行為」を行ったことを示すものではないと述べた。

トランプ氏に対する弾劾調査で問題となっているのは7月25日に行われたウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談。来年の大統領選で再選を目指すトランプ氏が職権を利用し政敵バイデン前副大統領(民主党)を捜査するよう圧力をかけた疑いが持たれている。

この日の公聴会は下院司法委としては初めてのもの。前日は下院情報特別委員会が、トランプ氏が来年の大統領選再選を狙って外国の選挙干渉を求めたほか、国家安全保障を危険にさらし、議会妨害も指示したと非難する弾劾調査報告書を公表。同委員会は報告書を13対9の賛成多数で承認した。

トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するために訪れていたロンドンで、下院情報特別委の弾劾調査報告書は「冗談」だとし、民主党に対し「米国を愛しているのだろうか」と述べた。

この日の公聴会では、民主党が招いたハーバード大学のノア・フェルドマン教授が、18世紀に憲法が起草された時、草案者は「現職の大統領が職権を乱用して大統領選の結果を自身に有利になるよう歪める」と懸念していたとし、トランプ氏の行動はまさにこの懸念を体現すると指摘。「個人的な利益のために職権を乱用する大統領を弾劾できなければ、われわれは民主主義の国に住んでいるとは言えない。君主主義、もしくは独裁主義の下で暮らしていることになる」と述べた。

スタンフォード大学のパメラ・カーラン教授は、トランプ大統領が外国に対し米選挙に介入するよう要請することで職権を乱用したとし、トランプ氏の行動は憲法の下で贈収賄と解釈されるとの見解を表明。トランプ氏のウクライナに対する要求は贈収賄に当たるかとの質問に対し、「その通りだ」と答えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱重の今期、事業利益9.6%増予想 市場予想下回

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊鋼への生産集約を本格検討 大阪の

ワールド

トランプ米大統領、8日にイスラエル戦略相と会談=ア

ビジネス

NTT、発行済み株式の1.81%・2000億円を上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    日本の「治安神話」崩壊...犯罪増加と「生き甲斐」ブ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中