最新記事

犯罪

エアバス初号機で飛んできたのは密輸のハーレー ガルーダ航空、私物化のCEOを解任

2019年12月11日(水)18時51分
大塚智彦(PanAsiaNews)

新型エアバスのデリバリーフライト便に載せられ密輸されようとしたハーレー(中央)とブロンプトン(左) Antara-REUTERS

<一般の旅行客と扱いが違うことを悪用、自分への「クリスマスプレゼント」を密輸しようとした悪党が捕まった>

インドネシアの国営ガルーダ航空の社長兼CEOが解任された。それも同社が新規導入した新型機の初号機で高級バイクを密輸しようとした、という前代未聞の出来事に同社職員や国民から厳しい批判を浴びる事態となっている。

エリック・トヒル国営企業相とスリ・ムリヤニ財務相は12月5日に会見し、ガルーダ航空のイ・グスティ・ングラ・アスカラ・ダナディプトラCEOの解任を発表した。これは11月17日にフランス・トゥールーズからインドネシア・ジャカルタに到着したエアバスA330-900型機の初号機デリバリーフライトで、税関に未申告の物品が発見されたことが原因となった。

同機の税関に提出された書類には同航空幹部22人とCA10人の手荷物以外の申告品の記載はなかったが、空港の税関職員が機内に未申告のオートバイや自転車の部品など18点を発見。調査したところ税金逃れを狙った悪質な「密輸品」との疑いが強まり、関係当局に通報したという。

税関などのその後の調べにより無申告で持ち込みが図られたのは、解体された米ハーレーダビットソン社製の中古大型バイク1台と英ブロンプトン社製の高級折り畳み式自転車2台などと判明した。

地元メディアなどによるとバイクの市場価格は約8億ルピア(約620万円)で自転車は1台が約5千万ルピア(約40万円)という。

財務省によると今回の密輸による関税未払い分は最高で約15億ルピア(約1160万円)に上るものとみている。密輸品事態の価格よりも高いのは、インドネシアでは高級品に関しては最高で200%が課税されることがあるためだ。

会社の私物化で高級品密輸

ガルーダ航空内部の調査などによるとアスカラCEOは2018年に今回密輸しようとしたバイクや自転車を部下に対して私的に注文を依頼。購入資金はガルーダ航空本社の財務担当責任者からオランダ・アムステルダムにある同社支店に送金されたという。一連の注文・購入関係の書類にはアスカラCEOと同じイニシャルの名前が記入されているという。

購入資金がアスカラCEO個人のものかガルーダ航空社の資金かは現段階では明らかにはなっていないというが、会社を私物化して関税逃れをしたことには間違いなく、「国営企業のトップとしてその責任は重い」(政府関係者)として解任処分となった。

今回の処分の背景にはインドネシアの悪弊である「汚職・癒着・親族主義(KKN)」の払拭を掲げるジョコ・ウィドド大統領の政治姿勢が強く反映されているといわれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、教育省解体・職員解雇阻止の下級審命令取り

ワールド

トランプ氏、ウクライナに兵器供与 50日以内の和平

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中