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スリランカ

スリランカが社会分断を克服して中国依存から脱出する道

IS SRI LANKA THE NEXT ARGENTINA?

2019年11月30日(土)14時00分
アルビンド・スブラマニアン(元インド政府首席経済顧問)

こうした紛争が経済に及ぼしたダメージは大きい。市民と国家の間に揺るぎない合意が形成されている国は、市民が行政サービスのコスト負担を受け入れ、政府は税収を確保しやすい。しかしスリランカの場合、税収の対GDP比は12%に満たない。

グローバル化と逆の現象が

税収不足に悩まされたスリランカ政府は、21世紀に入って対外債務を大幅に増やし始めた。しかも、金利の高い融資の割合が次第に上昇していった。対外債務はもはや手に負えない規模に膨れ上がっている。スリランカは極めて屈辱的な形でそのツケを払わされた。17年、南部のハンバントタ港の権益の大半を向こう99年にわたり中国企業に貸与する事態になったのだ。

スリランカ経済の足を引っ張っている要因としては、2000年以降、輸出の伸びが際立って減速していることも見落とせない。世界金融危機の前、世界中でグローバル化が猛烈な勢いで進んでいた時期に、スリランカでは逆の現象が進行していたのである。この背景にも社会の亀裂があった。

ラジャパクサ新大統領の下、スリランカの政治がどこへ向かうのかはまだ見えない。しかし、社会の一部の層だけを優遇する政策を推し進めれば、マクロ経済の安定は取り戻せないだろう。スリランカがアルゼンチン化を回避できるかどうかは、新大統領の肩にかかっている。

<本誌2019年12月3日号掲載>

【参考記事】スリランカは「右傾化する世界の縮図」―ヘイトスピーチ規制の遅れが招いた非常事態宣言
【参考記事】スリランカで準独裁体制が復活すれば、海洋覇権を狙う中国を利するだけ

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12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

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