最新記事

老後資金

雇用延長で老後の生活水準はどうなるか

2019年10月4日(金)19時05分
高岡 和佳子(ニッセイ基礎研究所)

続いて、厚生労働省平成30年賃金構造基本統計調査を参考に、それぞれの就労パターンで期待できる収入を考える。はじめに、(1-1)パートやアルバイトの従業員として就労するパターンの期待収入を、短時間労働者の賃金データを参考に考える。

男性で65歳から69歳の短時間労働者の年齢階級別1時間当たり賃金(1,246円)、平均実労働日数(14.8日)、及び1日当たり所定内実労働時間数(5.4時間)を参考にすると、月額10万程度と考えられる。次に、(1-2)パート・アルバイト以外の非正規の従業員として就労するパターンと(2)正規の従業員として就労するパターンを考える。男性で65歳から69歳の一般労働者(短時間労働者以外の労働者2)の賃金は、非正規の従業員で月額22万円程度、正規の従業員で月額30万円程度であるが、この値は利用しない。所得に関するデータは一部の高所得者の影響により平均値が中央値を大きく上回る傾向があるからだ。

nissei_191004_2.jpg

そこで、一般労働者の賃金の分布(図表2)を参考にする。賃金は正規の従業員の方が高い傾向にあること、65歳から69歳における一般労働者に占める非正規の従業員と正規の従業員の割合はほぼ同数であることから、(1-2)パート・アルバイト以外の非正規の従業員として就労するパターンの期待収入を賃金が低い方から25%目の人の賃金(月額17万円程度)とし、(2)正規の従業員として就労するパターンの期待収入を賃金が低い方から75%目の人の賃金(月額28万円程度)とする。但し、(2)正規の従業員として就労するパターンに限り、賞与(2か月分×年2回)を加算する(図表3)。

nissei_191004_3.jpg

就労延長などによる効果

先のレポート1と同様に、各種公表資料3を参考に、老後の資金の準備状況に応じて50代を4つのグループに分割し、就労延長などによる各グループの構成割合の変化を確認する。グループ1とは、退職時の退職給付も含めると、既に十分な資産を保有し、生活水準が低下する可能性が極めて低い世帯である。グループ2とは、今後の資金計画次第で生活水準が低下する可能性を回避できる世帯である。グループ3とは、生活水準が低下する可能性が高いが、今後の資金計画次第で低下率が10%未満にとどまる見込の世帯である。最後に、グループ4とは、生活水準が低下する可能性が極めて高く、かつ低下率が10%を超える見込の世帯である。

――――――――
2 賃金構造基本統計調査において「一般労働者」とは、「短期労働者」以外の者であり、正規か非正規とは無関係である。なお、「短期労働者」とは、同一事業所の一般の労働者より1日所定労働時間が短い又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者をいう。

3 家計調査及び広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年調査結果)、厚生労働省平成30年就労条件総合調査、東京都労働相談情報センター中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版))、及び中小企業庁 中小企業の企業数・事業所数(2016年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中