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中米グアテマラの女の子たちが、奪われた未来を取り戻すために

2019年10月8日(火)15時15分
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

バハベラパス県プルラ中心地から車をさらに2時間走らせた山奥の学校。女の子たちが通いやすいよう、男女別のトイレを作るなどの環境改善が図られている(撮影:安田菜津紀)

<国際NGOのワークショップを通じて、女の子たちが「学ぶ権利、自分の意思を表す権利」を広める活動が進んでいる>

中米グアテマラには日本と同じく火山が点在し、2018年6月にフエゴ山が噴火した際、死者・行方不明者は400人を超えた。その後もフエゴ山は小規模な噴火を続け、いまだ避難所での生活を余儀なくされている人々がいる。

しかしこの国に生きる人々が直面しているのは、自然の厳しさだけではない。今年7月、グアテマラ政府は、隣国ホンジュラスやエルサルバドルからアメリカへ難民申請を希望する人々を、通過点であるグアテマラ国内で待機させることを米政府と合意した。ただ、グアテマラ自体からも、多くの人々が「キャラバン」に加わり、危険をかいくぐりながらアメリカを目指してきた。果たしてグアテマラは、こうした人々の安全な居場所となりえるだろうか。8月に大統領選で勝利したアレハンドロ・ジャマテイ氏は、アメリカとの合意を「グアテマラにとって適切ではない」と批判している。国内では今、どのような問題に人々は向き合っているのだろうか。

とりわけ女性たちは、国内でも過酷な状況に置かれてきた。グアテマラに限らず、中米諸国には「マチスモ」と呼ばれる男性優位の価値観が根強く残っている。不安定な治安や格差だけではなく、「女性は学校に行くべきではない」「男性に従うべき」という偏見が、社会とのつながりを難しくしている。世界経済フォーラムが公表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2018」によると、グアテマラは107位、とりわけ経済活動への参加と機会、中等教育への就学、政治参画が深刻な課題として浮き彫りとなった。

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ホンジュラスから国境を越え、アメリカを目指していた母子。グアテマラ市のシェルターに身を寄せていた


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移民女性の救済施設で暮らす、エルサルバドル出身の女性の作品。左4つは母国でのギャングの脅威などを描き、右側は医師になる夢を表現しているが、その横には常に「影」がつきまとっているという


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サカテペケス県アロテナンゴには、フエゴ山噴火後183家族が身を寄せた仮設住宅があり、現在でも20家族が暮らし続けている


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仮設住宅での暮らしを続けるフエンティーナさん(左)とベアトリスさん。噴火の脅威も続き、子どもたちも仮設住宅近くの学校に馴染んでいるため、簡単には故郷に戻れないのだという

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