最新記事

教育

日本の中学生の大学院志望率は、たったの3%

2019年10月10日(木)12時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本の学生は学力が高くても大学院志望率が低い Rattankun Thongbun/iStock.

<世界のどんな先進国、新興国と比較しても断トツの低さ......日本人学生のキャリア展望に大学院の選択肢は入っていない>

今年春の4年制大学進学率(18歳人口ベース、浪人込み)は53.7%と報告されている。この世代の半分が大学に行くことの数値的な表現だ。これは世界有数の高さで、日本が教育大国と言われるゆえんでもある。

大学の上には大学院が置かれる。目的は「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与すること」だ(学校教育法第99条)。研究者だけでなく、高度専門職業人の養成も担うとある。

能力ある優秀な若者の入学が期待されるが、日本の生徒の大学院進学志望率は低い。中学校2年生の4年制大学進学志望率は56%と高いが、大学院になると3%まで激減する(IEA「TIMSS 2015」)。こういう国は他に類を見ない。<図1>は、大学院進学志望率の国際ランキングだ。

data191010-chart01.jpg

中東の諸国では、中学生の大学院進学志望率が高く、首位のレバノンでは7割近くにもなる。科学技術教育に力を入れ、潤沢なオイルマネーを(理系の)高等教育につぎ込んでいると聞くが、その表れだろうか。

アメリカは46%となっている。学歴主義で、大学院卒の学位の効用がはっきりしている国だ。実践的な職業教育の上でも、大学院は大きな位置を占めている。

日本はというと、たったの3%で調査対象国の中では段違いに低い。この年齢では、大学院とは何たるものかを知らないのかもしれない。あるいは、大学院に行ってもベネフィットはない、行き場がなくなることを早くして心得ているのかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中関係の「マイナス要因」なお蓄積と中国外相、米国

ビジネス

デンソーの今期営業益予想87%増、政策保有株は全株

ワールド

トランプ氏、大学生のガザ攻撃反対は「とてつもないヘ

ビジネス

米メルク、通期業績予想を上方修正 抗がん剤キイト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中