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ブレグジット

英ジョンソン首相、2日に離脱協定の最終案 EUが協議拒否なら強硬離脱へ

2019年10月2日(水)09時31分

ジョンソン英首相は2日、欧州連合(EU)と新たな離脱協定案を結ぶための最終提案を示す見通しだ。英マンチェスターで1日撮影(2019年 ロイター/Stefan Rousseau)

ジョンソン英首相は2日、欧州連合(EU)と新たな離脱協定案を結ぶための最終提案を示す見通しだ。EUがこの提案について協議に応じない場合は、さらなる交渉はせずに予定通り10月31日に離脱する考えも表明する。

ジョンソン氏は与党・保守党大会を締めくくる党首演説を行い、最終提案は「十分かつ妥当な譲歩」と語り、EUに送付すると表明する見通し。ブレグジット(EU離脱)に関する強硬姿勢は堅持するとみられる。

首相府が公表した演説原稿の抜粋によると、ジョンソン氏は、EU離脱を決めた国民投票から3年半経った今、「国民はこの国にブレグジットを全く実現したがらない勢力がいると疑い始めている」と指摘。「10月31日にブレグジットを果たそう。そうすれば2020年にこの国は前進できる」と強調する。

英紙テレグラフは、EU加盟国が英国から受けた説明として、英国の提案は、2025年まで英領北アイルランドとEUとの特別な関係を維持し、その後は北アイルランドがEUの規則に引き続き従うか、英国の規則の下に復帰するか決めるという内容になっていると報じた。

報道によると、この提案では、北アイルランドは少なくとも2025年までEU単一市場の大部分に残留する一方、EU関税同盟からは直ちに離脱することになる。

英紙ガーディアンは、北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)がこの提案におおむね「満足」しており、フォスター党首も支持していると報じた。

しかし、アイルランドのコーブニー外務・貿易相は提案について「懸念すべき」内容だとし、EUとの合意の土台にはならないとの見方を示した。

メイ前英首相がEUと合意したEU離脱協定案には、北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間にハードボーダー(物理的な国境)が復活するのを回避するためのバックストップ(安全策)が含まれており、ジョンソン氏が撤回を求める一方で、EUは再交渉を拒絶してきた。

英政府の高官は「政府は新たな協定について交渉するか、合意なき離脱に取り組むかどちらかだ。延期には誰も関与しない」と言明。「英史上最も民主的な」国民投票の結果を尊重するため引き続き尽力するとした上で、「EUはEU法で加盟国政府とのみ交渉することが義務付けられている。議会とは交渉できない。英政府は延期について交渉しない」と強調した。

ジョンソン氏は演説で、野党・労働党のコービン党首の公約どおり離脱期日を延期すれば、「あと3年間」こう着状態が続き、月間10億ポンド(12億3000万ドル)をEUに引き続き拠出し、その後何年も企業や国民にとって不透明感が続くことになると警告した。

「だからこそ10月31日にEUを離脱する。ブレグジットを果たそう。われわれにはそれが可能で、その必要があり、必ずや実現する」と訴える見通し。

[2日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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