最新記事

ブレグジット

イギリス、12月12日に総選挙へ EU離脱をめぐる選択へ

2019年10月30日(水)10時43分

英議会下院は29日、12月に前倒し総選挙を実施する法案を賛成多数で可決した。ロンドンで25日撮影(2019年 ロイター/Henry Nicholls)

英議会下院は29日、12月に前倒し総選挙を実施する法案を賛成多数で可決した。英国で12月に選挙が行われるのは1923年以来約100年ぶり。ジョンソン首相にとっては、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る行き詰まり打開に向け前進となる。

下院は前日、ジョンソン首相が提案した12月12日の総選挙実施に関する動議を否決。この日は労働党が一転して前倒し総選挙を支持。第2読会で圧倒的な支持があると判断されたことから、投票を行うことなく承認。その後の採決で賛成438票、反対20票で可決され、上院に送られた。

総選挙では、自身の離脱協定案の実現を目指すジョンソン首相と新たな国民投票に向けてEUとの再交渉を訴える最大野党・労働党のコービン党首の間で有権者の選択が問われる。

ジョンソン氏は保守党議員らとの会合後「この国を一つにまとめ、ブレグジットを実現する時が来た」と強調した。

コービン氏は議会で「総選挙の準備はできている」と述べ、「変化が訪れようとしている」とした。

一方、EUはこの日、月末に迫っていた離脱期限を1月末まで延期することを正式に承認した。トゥスク大統領はツイッターに「EU27カ国が正式に延期を認めた。これが最後の延期になるかもしれない。この機会を最大限に生かしてほしい」と投稿した。

各機関が今月行った世論調査では、保守党の支持率は2位の労働党を平均10%ポイント程度上回っている。ただ、2016年のEU離脱の是非を問う国民投票の前に行われた世論調査では、ブレグジット支持率が低く見積もられていたことが投票後に判明しており、調査機関はブレグジットという大きなうねりを前に、既存の調査手法にほころびが出ていると認めている。

総選挙で保守、労働の二大政党は互いに争うだけでなく、EUからの強硬離脱を訴えるブレグジット党やEU残留を主張する自由民主党の追撃をかわす必要がある。

ブレグジットを巡る政治の混乱を受け、有権者の中には関心の低下や不満の高まりが見られており、二大既存政党の支持離れも招いている。クリスマス前という総選挙のタイミングについても、一部の政治家は有権者の不評を買う可能性を懸念している。

調査機関「変わる欧州における英国」のディレクター、アナンド・メノン氏はロイターに対し「私が知る限りでは最も予想が難しい選挙になりそうだ」と述べた。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191105issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国不動産投資、1─8月は前年比12.9%減

ビジネス

中国8月指標、鉱工業生産・小売売上高が減速 予想も

ワールド

米国務副長官、韓国人労働者の移民捜査で遺憾の意表明

ビジネス

中国新築住宅価格、8月も前月比-0.3% 需要低迷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 8
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中