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未婚シングルマザーへの支援が少子化対策の鍵になる

2019年9月4日(水)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

しかし、経済的に恵まれた女性はごく一部だ。未婚の母の年収は、夫と離別した母よりも低く、税法上は寡婦でないので寡婦控除も適用されない。寡婦控除のみなし適用が広がりつつあるが、「寡婦に未婚を加えると、結婚して出産するという伝統的家族観を覆しかねない」という政府関係者の言葉に、未婚の母を歓迎しない向きが表れている。

上記のデータから分かるように、今では未婚の母は少数派ではない。「伝統的家族観」が時代にそぐわなくなっていることを知るべきだ。実をいうと、「結婚はしなくていいが子どもは欲しい」と考えている若い女性は結構いる。結婚に対する考え方と出産願望をクロスすることで、その量を割り出せる。<図1>は、20代女性の集計結果をモザイク図で表したものだ。横幅で結婚観、縦幅で出産願望の回答比率を表現している。

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日本の20代女性の半数が、結婚は「しなくていい」ないしは「しないほうがいい」と答えているが、そうやって結婚を否定する群の6割が「子どもは欲しい」と回答している。色付きのゾーンが「結婚はしなくていいが子どもは欲しい」という考えの人で、日本では20代女性全体の29.9%になる(スウェーデンでは59.9%)。

こうした女性が出産に踏み切れたら、出生数はかなり回復するだろう。若者の間では「結婚はオワコン」という見方も広まっている。「結婚して出産するという伝統的家族観」に固執していたら、少子化に歯止めはかかりそうにない。未婚の親、同性婚......どういうライフスタイルを選択しても子を育てられる社会の実現が望まれている。

<資料:総務省『国勢調査』
    内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2018年)

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