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マネーの主役は貨幣から人間へ──「マネー3.0」の時代

How to (Re) Make Money

2019年8月14日(水)16時00分
ガリア・ベナッツィ(分散型仮想通貨取引所バンコール共同創設者)

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1971年のニクソン・ショックで金本位制は一応崩れたが ANTHONY BRADSHAW/GETTY IMAGES

この会議のキープレーヤーは、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズと、米政府代表団の1人として出席したハリー・ホワイトだった。2人は第二次大戦で疲弊した世界経済を再生させ、安定化する仕組みとして、全く異なる通貨体制を提案した。

米国が英国に勝利した

ケインズが提案したのは、バンコールという超国家通貨の導入だ。バンコールは、全ての国の通貨および金と固定レートで結び付けられる。また各国のバンコール保有量は、国際貿易におけるシェアに基づき割り当てられるという。

その狙いには、世界経済を安定化させるだけでなく、世界経済の米ドルへの依存を低下させ、イギリスが引き続き世界のリーダーの地位を維持することも含まれていた。しかしバンコール案を嫌ったホワイトは、米ドルを世界の基軸通貨に据えることを決意したと、『ブレトンウッズの闘い──ケインズ、ホワイトと新世界秩序の創造』(日本経済新聞出版社)の著者で経済学者のベン・ステイルは語る。

21日間に及んだ会議の末、ホワイトはどうにか、のちにブレトンウッズ協定と呼ばれることになる合意条項を満場一致で可決させることに成功した。これにより米ドルは、直ちに世界の国の準備通貨となり、それが現在も続いている。

このように米ドルが基軸通貨となり、国際通貨基金(IMF)とWTOの前身である関税貿易一般協定(GATT)、そして世界銀行という戦後の国際金融システムの要となる組織が設立されるなかで、ブレトンウッズ会議は世界的な協力体制の在り方を決定付けた。

あらゆる時代の通貨に共通することだが、ここでも明白なのは、世界経済はいくつもの合意の束によって統治される必要があることだ。世界経済を構成する国々の通貨も、国内の合意の束から成り立っている。

ルーズベルトが述べたように、各国経済の健全性は、よその国の経済の健全性と密接に結び付いている。私たちは皆、全ての要素を兼ね備えた大きなシステムに依存しており、それに同意しなければならないのだ。

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