最新記事

香港デモ

香港は最後の砦――「世界二制度」への危機

2019年7月31日(水)19時07分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港市民の「一党支配体制」への警戒感

2019年1月22日、香港大学が行った意識調査が発表された。

テーマは「あなたは台湾独立に賛成しますか?」「あなたはチベット独立に賛成しますか?」あるいは「あなたは台湾と大陸の両岸統一を支持しますか?」など、非常に興味深いものだ。要は「一党支配体制」への警戒感を調査したということになる。

本来なら直接「あなたは北京政府を支持しますか」とか「あなたは北京政府が好きですか」あるいは「あなたは一国二制度を支持しますか」といった香港市民にとって最も切実な質問をしたかっただろうが、それをせずに、他の質問によって代替しているところが、なんともその苦しさを表していて、香港の現状を逆に映し出している。

民意調査の結果、以下のようなことが分かった。

  1.あなたは台湾独立に賛成しますか?
      18~29歳:賛成 58%
      30~49歳:賛成 41%
      50歳以上:賛成 21%

  2.あなたはチベット独立に賛成しますか?
      18~29歳:賛成 43%(2000年以来の最高比率)
      30~49歳:賛成 24%
      50歳以上:賛成  9%

  3.あなたは(台湾と大陸の)両岸統一を支持しますか?
      18~29歳:支持する 21%(支持しない75%)
      30~49歳:支持する 27%(支持しない64%)
      50歳以上:支持する 30%(支持しない54%)

香港大学のウェブサイトには、「昨年の調査では約37%の青年層(18~29歳)がチベット独立に賛成していたのだが、今年は43%となり、2000年から調査を始めて以来、最高のパーセンテージになった」という解説がある。

変わらないのは、若年層であればあるほど「独立」に賛成で、年齢が上がるにつれて「独立反対」が多くなるとのことだ。

もう一つ特徴的なのは、今年は全体として60%以上の人が「台湾と大陸の両岸統一に反対」で、54%の人が「台湾はもう一度国連に加盟すべきだ」と言っていることだと解説している。

つまり、香港の多くの若者が北京政府の支配に対して「ノー」を突き付けているという証なのである。

それは習近平体制になってから、言論弾圧の程度がますますひどくなってきたことと、実際に香港の書店の経営者などがつぎつぎと北京政府に拘束されるような事件が頻発したからに他ならない。

だから2014年の雨傘運動の失敗を繰り返さないように、これをラスト・チャンスと位置付けて若者を中心に頑張っている。高年齢層になると大陸との経済的癒着が強くなり、北京政府の顔色を窺う傾向が強まってくる。

香港は「民主」の最後の砦:「世界二制度」に移行しないために

米中対立が激化しているが、その根本原因が習近平政権のハイテク国家戦略「中国製造2025」に象徴されるハイテク戦争であることは、これまでに何度も論じてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中