『NHKから国民を守る党』はなぜ議席を得たのか?

2019年7月31日(水)13時15分
古谷経衡(文筆家)

なぜ日本文化チャンネル桜は『ジャパンデビュー"アジアの一等国"』を訴えたのかというと、日本が戦前、台湾を植民地統治していた時代、現地住民を苛烈に差別していた、という内容が気にくわないというものだ。簡単に言ってしまえば。そして日本文化チャンネル桜は、当時NHKで放送された戦前台湾に居住していた少数民族を取材し、『NHKの当該番組は、祖先と台湾人を陥れる反日プロパガンダだ!』と大々的に気勢を上げた。

結果、日本文化チャンネル桜を中心とする原告団はこの裁判に完全敗北した。無様な訴因を構築して喰ってかかったが、裁判官から門前払いされるような格好で、この裁判は終わった。

終わったのだが、日本文化チャンネル桜にとってNHKは仇敵であり続けたので、この時期、日本文化チャンネル桜が立花氏を局の看板番組ともいえる討論番組に招聘したのは当然といえば当然の理屈である。

2)私と立花氏の邂逅~2

立花氏は、とにかく喋りがうまく、頭の回転が速い、という第一印象を持った。その内容が本当かどうかわからないが、「元NHK職員」として「NHKの内部告発」をしゃべる様子はそこら辺の素人ではなかった。だが、それだけだった。

立花氏は徹頭徹尾NHKを呪詛するが、それ以外の、所謂「保守派」が定石とする、嫌韓や反中、さらに憲法改正や靖国神社公式参拝問題、および種々の歴史(修正主義的)問題にはほとんど言及しなかった。というよりも、そういったことには関心が無いようであった。とにかく徹頭徹尾、立花氏の論点は「NHKがいかに悪の組織であるか」から出発して、「よってNHK受信料を払う必要はない(―そしてNHK受信料解約の方法教授)」という結論だけであった。

その後、私は2012年夏ごろより、或るネット右翼系の雑誌編集長になる。雇われ編集長だが、版元の強い意向により立花氏を取材することになった。「反NHK特集」の中で、立花氏のインタビューを入れたい、ということであった。私の記憶では、この時が私と立花氏の二回目の邂逅である。より正確に言えば、東京東部にある立花氏の事務所に直接行こうと思ったが、先方が「多忙」(だったと思う)の理由で電話取材になった。しかしそれは正確には電話取材ではなく、スカイプを使ったテレビ電話取材だった。

私は立花氏から、「可能であれば憲法改正や嫌韓など、保守派やネット右翼層が好む他分野の話題」を引き出し、そのインタビューに含意しようと思った(そのほうが、インタビュー内容に縦深が出ると思ったからである)が、立花氏はNHK以外のことにはほぼ一切喋らず、やはり最初から最後まで徹底的にNHKへの呪詛をまくしたてた。というよりも、それ以外にはあまり関心が無いようだった。立花氏の、よく言えば究極的な、悪く言えば異様とも言えるNHKへの執着と敵愾心は、2012年の段階で全く揺るがないものであった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:中国、サービス消費喚起へ新政策 カギは所得増

ビジネス

NY外為市場=米当局がレートチェック、155.66

ビジネス

米国株式市場=ダウ下落・S&P横ばい、インテル業績

ワールド

米ロ・ウクライナ三者協議、初日終了 ドンバス領土問
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 8
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 9
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中