最新記事

海洋生物

身体中が発光する14センチの新種のサメが見つかる

2019年7月23日(火)18時10分
松岡由希子

体長14.2センチの新種のサメ (Grace et al., 2019, Zootaxa)

<メキシコ湾で深海探査艇が捕獲していた体長14.2センチのサメが新種として論文発表された>

小型のサメの一種ヨロイザメ科フクロザメ属に分類される体長14.2センチの新種の雄ザメが見つかり、「アメリカンフクロザメ」と名付けられた。2019年7月18日、動物分類学の学術誌「ズータクサ」において、その研究論文が発表されている。

胸びれの上部に袋状器官を持つフクロザメ

このサメは、メキシコ湾でマッコウクジラの調査にあたっていたアメリカ海洋大気庁(NOAA)の深海探査艇パイシーズが2010年2月に捕獲したものだ。小型で、頭部が丸みを帯び、胸びれの上部に袋状器官を持つフクロザメは非常に珍しい。1979年に体長40センチの雌ザメが東太平洋で初めて捕獲されたのに続き、このサメが2例目となる。

アメリカ海洋大気庁のマーク・グレース研究員は、2013年、一連の調査で採集した生物のなかからこのサメを見つけ、米テューレーン大学の魚類標本にこれを加えるよう依頼。また、同大学の博士課程に在籍するマイケル・ドゥーシー研究員とともに、この研究に着手した。

体中が無数の発光器で覆われている

研究チームでは、解剖顕微鏡を使って外部形態を観察し、X線撮影や高解像度CTスキャンに加え、仏グルノーブルにある欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)で、通常のX線よりも1000億倍高い輝度を持つシンクトロン放射光を使って内部形態を撮影。これらのデータを用い、このサメについて詳しく分析した。

matuoka0723c.jpg

(Grace et al., 2019, Zootaxa)

その結果、1979年に見つかったフクロザメに比べて椎骨が10本少なく、体中が無数の発光器で覆われているなど、異なる特徴が認められた。なお、両側の胸びれの上部に発光液を生成する小さな袋状器官がある点は共通しており、サメは、この発光液を使って、獲物をおびき寄せたり、天敵から逃れたりしているとみられる。

pocket-shark-on-side.JPG

(Grace et al., 2019, Zootaxa)

研究論文の共同著者でもあるテューレーン大学のヘンリー・バート教授は、今回の研究成果について「メキシコ湾の深海についてこれまでに解明されていることはほんのわずかであり、この海域には、まだ未知の生物が数多く潜んでいることを示すものだ」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中