最新記事

人権問題

韓国・仁川空港に住むアンゴラ人家族 「人権派」大統領の国は難民申請どころか入国も拒否

2019年6月21日(金)17時10分
桑原 りさ(キャスター)*東洋経済オンラインから転載

韓国の仁川国際空港に150日以上も“暮らしている”アンゴラから来たルレンドさん一家(筆者提供)

「自分の国に帰ったら殺されるかもしれないのに、外国にも行っちゃいけない、空港から外にも出してもらえないなんて、おかしいと思わない? 考えられる?」そう話すのは、熊本に住む7才の少女、小都(こと)ちゃん。

5月初旬、小都ちゃんは家族旅行中に韓国・仁川国際空港で、アンゴラから来た6人家族、ルレンド一家と出会った。6時間ものトランジットで暇を持て余す小都ちゃんが、同じ年頃の子どもたちに「一緒に遊んでいい?」と声をかけたのがきっかけだった。

ルレンド一家は、祖国アンゴラで命の危険を感じ「難民」としての受け入れを望んで韓国に逃げてきたものの、難民申請はおろか入国すら許されていない。現在控訴中で、空港の中に150日以上も"住む"ことを余儀なくされている。

小都ちゃんの家族は、日本に帰国後もルレンド一家のことが気がかりだった。「ただの旅の思い出話で終わらせてはいけない」と、ルレンド一家を救うために手作りのチラシを配布したり、SNSで国内外に情報発信を始めた。

newsweek_20190621_165918.jpg

ルレンド一家救済に奔走する小都ちゃんと両親(筆者撮影)

空港でひときわ目立つルレンド一家

5月中旬、筆者は、熊本で開催されたイベントでチラシを配る小都ちゃんに偶然に出会い、ルレンド一家の存在を知ることとなった。そして10日後、筆者は仁川国際空港へ飛んだ。

空港第1ターミナルの会員専用ラウンジの前で、荷物を山積みにし、並べたソファをベッド代わりにして生活する一家の姿はすぐに目を引いた。ルレンド一家は、夫妻とリマくん(9)、双子のロデちゃん(8)とシロくん(8)、グレイスくん(6)の6人家族。空調で冷え切った室内で過ごす家族は、時折身震いや咳をし、疲弊しているように見えた。

ルレンドさんの祖国アンゴラでは、1975年から2002年まで内戦が起きていた。戦火を逃れて隣国コンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)へ渡り、内戦後に再びアンゴラに戻ってきた人たちは裏切り者扱いをされ、侮蔑の意味を込めて「バコンゴ」と呼ばれて差別されてきた。両親の避難先のコンゴ民主共和国で生まれたルレンド夫妻は、大人になって祖国アンゴラに戻ってきた。そこでルレンド一家はバコンゴとされ、日常的に差別を受けてきたという。

状況が一変したのは、2018年11月16日。タクシー運転手だったルレンドさんは、運転する車の前に急に飛び出してきた集団を避けた際、アンゴラ警察の車と軽い接触事故を起こしてしまった。言語の違いによってバコンゴであることを警察に気付かれたルレンドさんは暴力を振るわれ、車の前に飛び出してきた人物に対する殺人容疑で逮捕された。刑務所でも警察からの暴行は続いたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

株式と債券の相関性低下、政府債務増大懸念高まる=B

ビジネス

米国株式市場=ナスダック連日最高値、アルファベット

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、FOMC控え

ワールド

米軍、ベネズエラからの麻薬密売船攻撃 3人殺害=ト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中