最新記事

選挙

インドネシア「大統領選無効」憲法裁審理続く 野党連合崩壊で政界再編

2019年6月19日(水)19時33分
大塚智彦(PanAsiaNews)

憲法裁判所前では大統領支持派、プラボウォ支持派がともに「正しい結果」を求めていた Willy Kurniawan - REUTERS

<インドネシアの大統領選は、落選した野党候補が「不正投票があった」と主張、憲法裁判所で審理が始まった。一方、野党連合からは離反も出て政界は風雲急を告げる様相だ>
          
4月17日に投票され、5月21日に選挙管理委員会が最終的な集計結果を発表したインドネシア大統領選。結果に対し「不正があった」と敗者の大統領候補プラボウィ・スビアント氏陣営が異議申し立てをしたことを受けて、憲法裁判所は本格的な審理を6月14日から始めている。

その一方でプラボウォ氏を大統領選で支持した野党連合の一部がジョコ・ウィドド大統領や与党連合に接近する動きが進んでおり、インドネシアに政界再編の波が押し寄せている。

憲法裁での審理の様子は複数の民放テレビ局が生中継するなど国民の関心は高い。しかし、ジョコ・ウィドド大統領陣営の弁護団も参加して進むプラボウォ陣営弁護団と裁判官のやりとりから、プラボウォ側の「ジョコ・ウィドド大統領陣営の失格を認定して選挙結果を撤回、プラボウォ氏の当選を認める」「不正のあった12州での再選挙」などの主張は退けられる公算が高まっている。

前回2014年の大統領選でも負けたプラボウォ陣営は同様の訴えを憲法裁に起こしたが、証拠不十分で却下されている。

大統領側が「2200万票水増し」と訴え

プラボウォ側はこれまでの審理で、大統領選では「組織的、大規模な不正」があったとしてジョコ・ウィドド大統領陣営が2200万票を水増しして集計、不正があったと主張している。

選管の正式集計では、ジョコ・ウィドド大統領が8560万7362票を獲得(得票率55.5%)、プラボウォ氏の6865万239票(同44.5%)となっている。その票差は1695万7123票となっている。

さらにプラボウォ側は投票の公正性にも疑問を示しており、6月19日の審理では東ジャワ州の選管関係者がプラボウォ陣営の証人として出廷した。

「今年4月ごろに脅迫を受けた」とする証人に裁判官が「誰から脅迫を受けたのか」と証言を求めるものの証人が「私や家族の危険が及ぶのでそれは言えない」と拒否。裁判官が「ではなぜ脅迫を受けたことをその時に司法当局なりに通報しなかったのか、インドネシアは司法国家である」と迫るなど、「法廷ドラマ」としても面白い展開が続いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中