最新記事

弾圧中国の限界

「香港は本当にヤバいです」 逃亡犯条例の延期を女神は「予言」していた

2019年6月17日(月)06時35分
長岡義博(本誌編集長)

――危機感が共有されている、と。

危機感というより恐怖感、恐怖感よりも絶望感だと思います。今回だけは阻止しないとダメ、という意思がすごく強かった。今までの運動とは全然違う。

――逃亡犯条例は香港人が台北で殺人事件を起こしたことをきっかけに改正の動きが始まった。もし事件がなければ、香港政府は改正しなかったのか。

そうではないと思う。この事件は政府の「言い訳」。

――もともと、こういう条例を作りたいと思っていた、と。

この事件はきっかけの1つと思います。台湾は中国の一部という前提に納得できないので、今、(改正案が)可決されても台湾は(香港人容疑者を)引き渡さない、とはっきり言った。可決されても、台湾からの殺人犯引き渡しは実現されない。本当の理由は殺人犯の引き渡しではない、とみんなが思っている。

中国が好きじゃない人、中国に反対する人、人権を求める人、そして中国で商売をしたり、中国情報を持っている人に対して何か目的があるのではないか。私たちのような活動家だけではなく、中国の官僚と深い関係のある、中国で商売をやっている香港人や外国人をターゲットにするのでは、と思います。今回、財界やビジネス界が強く反対するのはその証しじゃないかと。

――当初、今回のデモに対して外務委員会で「(日本政府として)大声で叫べばいいというものではない」と答弁していた河野太郎外相が、先日ツイッターで「香港の友人として、最近の情勢を大変心配している」と、態度を少し変化させた。

改正案に対する立場をはっきり言ったわけではないが、「香港に注目している」とか「香港の友人として、最近の情勢を大変心配している」とツイートしてくれたのは香港人としてはありがたいです。

――欧米に比べて日本政府の対応は物足りない?

日本政府は自分の国民の人権と身の安全、自由と命のために何か言うべきだと思います。中国は法治社会ではない。ルールを守らない政権で、勝手に罪を作りあげるのがとてもうまい。中国で収監され、不可解な形で死んだ人もいる。自由や政治的な権利だけでなく、命の問題。捕まって中国に送られたら帰れるかどうか分からない。だからこそ、香港人だけではなく、欧米政府やEUが反対の声を上げている。日本企業や日本人がたくさん香港にいるのだから、日本政府も反応しないとだめだと思う。

――自分の身にいつか危害が加えられるのでは、という恐怖感はないか。

恐怖感はあります。この改正案が可決されたら、中国はやり放題になる。

――香港返還の半年前に生まれた周さんの中国に対する印象は?

弾圧を強める、約束を守らない、一国二制度を一国二制度ではないように変えた、天安門事件で自分の国民を殺す、といった印象ですね。

――中国から香港に移住している人が増えている。彼らはこの問題をどう見ている?

中国で教育を受けてから来た人は私たちとは価値観が全然違います。でも、香港にはまだわずかの自由が残っている。自由が残っている香港で、(大陸と違って)グーグルやフェイスブックが使える香港で、彼らが自分の故郷では見えない情報が見えるようになったらいい、と思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏「グローバリゼーションは時代遅れ」、新興

ビジネス

5月実質賃金2.9%減、5カ月連続 1年8カ月ぶり

ビジネス

インド、米自動車関税に対抗し報復関税 WTOに通知

ワールド

関税引き上げ8月1日発効、トランプ大統領「複数のデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中