最新記事

アメリカ政治

トランプの対メキシコ関税、共和党「我慢の限界」

Mexico Tariffs Could Be ‘Break Point’

2019年6月6日(木)16時07分
ジェイソン・レモン

共和党のランド・ポール上院議員(ケンタッキー州選出)は4日、CNNに対し、関税発動を阻止するのに必要な共和党議員の票が集まる見込みだと語った。「たった1人の人間にこんな決定をさせてはならないと多くの議員が考えており、この件では大統領の拒否権をくつがえすのに十分な票が集まるだろう」

アイオワ州選出の共和党上院議員で、上院財政委員長を務めるチャールズ・グラスリーは先週、いち早く関税発動に異議を唱えた1人だ。「貿易政策と国境警備は別個の問題だ」と、グラスリーは述べた。「これは大統領の関税権限の乱用であり、議会の意思を踏みにじる暴挙だ」

こうした批判にもかかわらず、トランプは4日、関税発動を阻止しようとする共和党議員の動きは「ばかげている」と語った。

移民と貿易をごっちゃにするな

反対派は、関税を課せば輸入企業はコスト増に耐えきれず、製品の値上げに踏み切り、結局はアメリカの消費者にツケが回ることになる、と警告している。旧NAFTA(北米自由貿易協定)の下で、多くの米企業がメキシコとの国境をまたいでサプライチェーンを構築した。そのため製品によっては、消費者の手に渡るまでに、何回も国境を行き来し、そのたびに関税がかかることになりかねない。

トランプ政権は目下、NAFTAに代わる新協定「米国・メキシコ・カナダ協定」の批准手続きを進めている。新しい自由貿易協定の成立を目指す一方で、関税を課すのは矛盾した決定であり、非生産的だと指摘されている。トランプの脅しは協定を傷つけ、議会での批准をさらに難航させかねないと、共和党議員は警告している。

グラスリーとポールらは、大統領の職権乱用も問題にしている。貿易と移民政策は切り離して考えるべきで、トランプが国境における「危機」とみなす状況に対して関税カードを切るのは誤りだ、というのだ。大半の共和党議員は、トランプの強硬な移民政策の多くを支持しているが、まったく異なる問題で制裁関税を課すことには強く反発している。

20190611issue_cover200.jpg
※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中