最新記事

自動車

仏ルノー、FCAと経営統合に意欲 日産はグループ内で蚊帳の外?

2019年5月29日(水)13時00分

5月29日、仏ルノーはフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)との経営統合案を優先し、日産自動車との経営統合を見送る可能性がある。写真はルノーと日産のロゴ。フランスのサン=タヴォルで1月撮影(2019年 ロイター/Christian Hartmann)

仏ルノーはフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)との経営統合案を優先し、日産自動車との経営統合を見送る可能性がある。ルノーとの統合案に反対している日産の西川広人社長は、ルノー・FCA統合案には今のところ前向きのようだ。ただ、FCAが参画すれば、世界販売首位に躍り出るグループ内での日産の影響力は、さらに低下する恐れがある。日産は難しい判断を迫られそうだ。

FCAは将来も日産との統合求めず

FCAが求めているルノーとの経営統合の大きな狙いの1つが、ルノーだけでなく、ルノーと企業連合を組む日産と三菱自動車との協業だ。FCAは電気自動車(EV)や自動運転など、次世代技術で先行する日産や三菱自も含めた4社による相乗効果を見込んでいる。

ただ、統合案に詳しい関係筋によると、今回の提案でFCA側はあくまでもルノーとの経営統合を目指しており、将来の日産との統合まで求めていない。その関係筋は、ここ数カ月間のルノーと日産、三菱自との関係は「おそらく誰もが望むほど建設的ではない」と指摘。FCAはルノーに対し、日産との経営統合は追求しないほうがいいとアドバイスするだろうとも話している。

ルノーはFCAとの経営統合案の検討を優先し、これまで強く求めてきた日産との統合案を後回しに、あるいは撤回する可能性がある。もしそうなれば、ルノーとの統合に強く反対してきた西川社長にとっては、想定外の「追い風」にもなる。

FCAとルノーが経営統合案を検討すると発表した27日夜。西川社長は都内で記者団に対し、この統合案について「アライアンス(企業連合)の幅は、広がる方がいい。全体としては将来に向けてポジティブな話だ」と笑顔を見せた。

蚊帳の外だった西川社長

だが、統合案発表までの舞台裏をみると、親子関係でアライアンスも組むパートナー同士であるにもかかわらず、ルノーと日産の間には他人のような距離感があることもあらためて浮き彫りになった。

ルノーとFCAは、今春ごろから今回の協議を水面下で進めていた。だが、関係者4人によれば、西川社長がこの計画を把握したのは両社による発表のほんの数日前。


関係者1人によると、西川社長はルノーの取締役も務める山内康裕・最高執行責任者(COO)を通じて初めて計画のうわさを耳にした。ルノー側から計画に関する正式な通知を受け取ったのは、交渉が報じられるわずか1日前だったという。

統合案では、FCAは当然ながら日産との協業も想定している。もっと事前に相談があってもいいところだが、先の4人とは別の日産関係者は「西川社長を含め、日産は蚊帳の外だった」と話している。

ルノーのジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレCEOは、28日に来日。FCAとの経営統合案の説明や日産とルノーとの経営統合を巡る交渉のほか、日産・ルノー両社の関係改善も図るべく、29日に日産、三菱自との3社トップ会談に臨む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳会談の実現に暗雲、ロの強硬姿勢が交渉の足か

ビジネス

米国株式市場=まちまち、堅調な決算受けダウは200

ワールド

トランプ氏「無駄な会談望まず」、米ロ首脳会談巡り

ワールド

EU通商担当、中国商務相と電話会談 希土類輸出規制
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中