最新記事

自動車

仏ルノー、FCAと経営統合に意欲 日産はグループ内で蚊帳の外?

2019年5月29日(水)13時00分

日産の地位低下

FCAとルノーの経営統合案では、両社の既存株主が50%ずつを保有する持ち株会社を設立する。FCAの登記上の本社所在地はオランダ。FCAの提案では、ルノーとの経営統合が実現すると、新たな持ち株会社の本社もオランダに置く計画だ。

現在の日産のルノーへの出資比率は15%。フランスの法令上、議決権はない。FCAとルノーが統合すれば、日産の出資比率は7.5%に半減するが、新会社の本社がオランダに置かれるため、フランスの法令の効力が及ばず、日産には新たに議決権が発生する。

持ち株会社には日産からも取締役1人が就任する見込みだが、持ち株会社の会長にはFCAのジョン・エルカン会長が就任し、ルノーのスナール会長がCEOに就く予定だ。

日産はこれまで販売規模(約551万台)と業績でグループでの存在感を示してきたが、業績は悪化の一途。FCA(約484万台)が加われば、グループの販売台数は1500万台超と世界首位になる。4社はあらゆる面で「規模の経済」を享受できるが、持ち株会社での力関係なども考慮すると、「日産の立場と影響力はFCAよりも弱くなる」と、自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは指摘する。

日産のスポーツ多目的車(SUV)がFCAのジープ・ブランド「チェロキー」と競合するなど、北米におけるトラック系市場でFCAと日産のモデルが競合していることもネックだ。

こうした課題が生じるにもかかわらず、ルノーがFCAとの経営統合案を前向きに検討するということは「ルノーは必ずしも日産と運命共同体である必要はないという強いシグナルを送っている」――。ある自動車業界アナリストは、こうした見方も示している。

FCA・ルノーの統合交渉では、ルノーの経営陣に近い関係筋は、日産は経営の自律性をあきらめて規模を取るか、規模をあきらめて自律性を維持するかの選択を余儀なくされるかもしれない、と話している。

白木真紀、田実直美 in Tokyo、白水紀彦 in Beijing、Laurence Frost in Paris、Giulio Piovaccari in Milan, Joe White in Detroit 編集:田巻一彦

[東京 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、IAEAとの協力協定無効と表明 査察不可能

ビジネス

米ISS、コアウィーブによる90億ドル規模の買収計

ワールド

アラスカLNG事業、年内に費用概算完了=米内務長官

ワールド

アングル:高市政権、日銀との「距離感」に変化も 政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中