最新記事

ウクライナ

ウクライナのコメディアン大統領と議会に「ハネムーン期間」はなし

2019年5月29日(水)11時45分
クリスティナ・マザ

ZOYA SHUーPOOLーREUTERS

<大統領選で国民の圧倒的支持を得て勝利したコメディアン出身のゼレンスキーだが、自らが率いる政党「国民の公僕」の議会での議席は現状ゼロ>

ドラマで演じた役柄そのままに、4月のウクライナ大統領選決選投票で国民の圧倒的な支持を得て勝利したコメディアン出身のゼレンスキー(文頭写真)。政治経験ゼロで難題山積のウクライナ政治を仕切れるか。内外の懸念をよそに就任早々、前任者の息のかかった人物の一掃と議会での足場づくりに乗り出した。

20日に行われた就任式で、ゼレンスキーは議会の解散と議会選挙の早期実施を宣言。国防相や検事総長らポロシェンコ前大統領が指名した閣僚や高官を罷免するよう議会に求めた。

アメリカでは通常、大統領の就任後100日間は「ハネムーン期間」と呼ばれ、議会やメディアも大統領に協力的だが、今回のウクライナの政権交代では「ハネムーン期間はないだろう」と、米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのメリンダ・ヘアリングは言う。

ゼレンスキー率いる「国民の公僕」党は大統領選のために結成された新党で、現状では議席ゼロ。決選投票でのゼレンスキーの得票率は70%超だったから、この追い風がやまないうちに「できるだけ早く議会選を実施して、協力的な」議会にすることが、新大統領の「最優先課題だろう」と、ヘアリングはみる。

もちろん既成政党はこれに抵抗。大統領就任式を控えた17日にはポロシェンコ政権で連立政権の主軸を担った国民戦線が連立を離脱した。突然の離脱劇は議会選の前倒しを狙うゼレンスキーへの圧力とみられている。

だがゼレンスキーの就任直後には、フロイスマン首相が辞任を表明。選挙前倒しに抵抗するより、腹をくくって選挙戦に向けた工作を始めたほうが得策だと判断したようだ。

ゼレンスキーは21日、議会解散の大統領令に署名。議会選は7月21日に実施される見込みだが、解散の法的根拠をめぐってさらに攻防が続く可能性もある。

<本誌2019年6月4日号掲載>

20190604cover-200.jpg
※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。


ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中