最新記事

EU

「EU加盟国同士の戦争はありえる」、欧州人3割が回答

2019年5月21日(火)15時00分
松丸さとみ

「EUは20年以内に崩壊」と欧州人半数以上が予測 mikie11-iStock

<欧州議会選挙に先立って行われた調査で、欧州人の半数以上が、今後20年以内にEUが崩壊し、3割が「域内戦争あるかも」と回答した......>

EUへの思いは二極化?

今月23〜26日に行われる欧州議会の選挙に先立ち、欧州連合(EU)のシンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)が行なった調査で、欧州人の半数以上が、今後20年以内にEUが崩壊すると考えていることが分かった。

調査はEU加盟国28カ国のうち14カ国(オーストリア、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、スロバキア、スペイン、スウェーデン)にて合計6万人を対象に、3月下旬から4月上旬に行われた。

ECFRは今回の調査で、「EU加盟を支持する人の割合は3分の2に達し、1983年以降最多となった」ことが分かったとしている。

しかし一方で近年、フランスの「国民連合」(旧国民戦線)やドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」、オーストリアの「自由党」といった極右政党が台頭している影響もあってか、「今後10〜20年でEUは崩壊する可能性があると思うか?」という質問に対しては、回答者の半数以上が「現実的だと思う」と回答した。特に割合が高かったのはスロバキアで、66%の人が「現実的だと思う」と回答。次いでフランスの58%だった。他にも、イタリア(57%)、ドイツ(50%)などで高い割合になった。

平和目指したはずのEU、今は「域内戦争あるかも」が3割

1950年に作られた欧州石炭鉄鋼共同体(正式な設立は1951年のパリ条約)から始まった欧州連合だが、もともとは、第2次世界大戦を受け、隣国同士での戦争をなくそうという狙いで作られたものだ(EU公式サイトよりより)。しかし70年近くたち、EU加盟国同士で戦争する可能性もあると考えている人が少なくないことが、今回の調査で明らかになった。

ECFRによると、10人に3人は「EU加盟国同士の戦争はありえる」と回答した。極右政党の支持者にこう考える傾向が強く、フランスの国民連合、ドイツのAfD、オーストリアの自由党、オランダの自由党、ハンガリーのヨッビク、ギリシャの「黄金の夜明け」の支持者に限定すると割合が高まった。国民連合支持者では46%、AfD支持者では41%に達した。また、今回の欧州議会選挙では投票しないと明言している人にも同じ傾向が見られたという。

さらに、若年層では支持政党に関係なく「EU加盟国同士の戦争がありえる」と考える人の割合は高まり、18〜24歳に限定すると、オランダで51%、フランス46%、ルーマニア51%などの結果になった。

今回の調査結果を受けてECFRは、「今のEUにとって最大の問題は、欧州懐疑主義でも反欧州連合でもなく、欧州悲観論(ユーロペシミズム)だ」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中