最新記事

報道

ピュリツァー賞決定 国際報道はロヒンギャ迫害の調査報道で記者逮捕されたロイターらに

2019年4月16日(火)11時55分

4月15日、米報道界で最高の名誉とされるピュリツァー賞が発表され、ロイターが国際報道とニュース速報写真の2部門を受賞した。写真は2018年8月、ヤンゴンの裁判所に到着したロイターのワ・ロン記者とチョー・ソウ・ウー記者(2019年 ロイター/Myo Kyaw Soe)

米報道界で最高の名誉とされるピュリツァー賞が15日発表され、ロイターが国際報道とニュース速報写真の2部門を受賞した。イスラム系少数民族ロヒンギャ迫害に関する調査報道と、米国の国境で中米からの移民の姿を追った写真が評価された。

ロイターは2年連続で2部門で受賞。2008年以降で7回受賞している。

ロヒンギャ迫害を取材した記者のうち2人は、2017年12月に取材で極秘資料を不法に入手したとして逮捕され、その後有罪判決を受けた。

ロイターのスティーブン・アドラー編集主幹は「報道の功績を認められることは喜ばしいが、われわれよりも報道される側、この場合はロヒンギャと中米の移民に人々の注目がさらに向けられるべき」とコメントした。

他の部門では、米国での銃乱射事件の報道やトランプ大統領に関する調査報道が主な受賞対象となった。ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙もそれぞれ2部門で受賞した。

国際報道部門は、ロイターのほかアソシエーテッド・プレス(AP)が、イエメン内戦がもたらした悲惨な状況に関する報道で選ばれた。

ロヒンギャ迫害を取材したロイターのワ・ロン、チョー・ソウ・ウー両記者は昨年9月に国家機密法違反罪で禁錮7年の判決を言い渡され、現在最高裁で上告審が行われている。

両記者はミャンマー・ラカイン州の紛争地帯の中心にあるインディン村で起きた、ミャンマー治安部隊と仏教徒の村民による10人のロヒンギャの男の虐殺事件を取材。両記者は記事が完成する前に逮捕されたが、ロイターの同僚記者2人が特別リポートをまとめ、18年2月に掲載された。2人の逮捕については、当局が記事を阻止するために行ったと批判する声が国際社会で出ている。

アドラー編集主幹は「ワ・ロン、チョー・ソウ・ウー両記者と同僚たちが並外れて勇敢な報道を認められ、ロイターのカメラマンが巨大な障害に立ち向かう人々の姿を写した心を奪われるような写真で認められたことに私は興奮している」と表明。「しかし、勇敢なワ・ロン、チョー・ソウ・ウー両記者がまだ獄中にいることには深く心を痛めている」とした。

ニュース速報写真部門は、中米から米国境に向かう難民申請希望者らの姿を撮影した一連の作品で、ロイターのカメラマン11人の取り組みが認められた。

1枚の写真では米サンディエゴとメキシコ・ティフアナの国境で移民が米当局が発射した催涙ガスを逃れてメキシコ側に入る姿を写した。別の航空写真はテキサス州トルニーロの移民収容施設で子供たちが囚人のように一列になって歩いている姿を写した。

[ニューヨーク 15日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

リクルートHD、求人情報子会社2社の従業員1300

ワールド

トランプ氏の出生権主義見直し、地裁が再び差し止め 

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の

ワールド

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中