最新記事

日本社会

新元号「令和」、万葉集から出典 安倍首相「心寄せ合い、文化育つ」

2019年4月1日(月)13時11分

政府は平成に変わる新たな元号を「令和(れいわ)」にすると発表した。写真は新元号を発表する菅義偉官房長官。代表撮影(2019年 ロイター)

政府は1日、平成に代わる新たな元号を「令和(れいわ)」にすると発表した。現存する日本最古の歌集「万葉集」からの出典で、日本古典から採用したのは今回が初めて。安倍晋三首相は官邸内で記者会見し、「心を寄せあう中で文化が生まれ育つという意味が込められている」と、新元号への想いを説明した。

新元号決定に伴い政府は元号を「令和」とする政令を定め、皇太子さまが天皇に即位する5月1日に改元する。

新元号「令和」の出典は万葉集で、政府によると、梅の花の歌の序文「初春の令月(れいげつ)にして、氣淑(きよ)く風和らぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす』から引用した。

新元号は、大化(たいか)から平成まで1300年余りにおよぶ歴史のなかで248番目の元号となる。新元号の考案者は「(考案者みずからが)秘匿を希望している」(菅義偉官房長官)ことを理由に、公表を見送った。共同通信によると、新元号選定手続きに示された政府の元号原案は、新元号も含めて「6つ」だった。

新元号について、安倍首相は「人々が美しく、心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味」と、記者会見で説明した。

首相はまた「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたい、との願いを込めた」ことも明らかにした。

新元号決定に先立ち、政府は有識者による「元号に関する懇談会」や衆参両院の正副議長、全閣僚らと事前の協議を重ねた。

有識者懇談会のメンバーはノーベル医学生理学賞受賞者の山中伸弥京大教授ら9人で、山中教授は「初めて日本の古典から選ばれた。伝統を重んじると同時に、新しいものにチャレンジしていく、日本にぴったりの元号」と、官邸内で記者団に語った。

地方の文化、時代を表現

新元号に関し、専門家からは「21世紀の日本、世界にとって大事な価値を示している。前向きな明るい未来が展望できる良い元号」(京都産業大学名誉教授の所功氏)との指摘が出ている。

日本の古典から採用したことについても「日本の独自性という意味で万葉集は良かった」(東大史料編纂所教授の山本博文氏)との受け止めが多い。

万葉集を専門とする奈良大学文学部教授の上野誠氏は、「万葉集にある『令月』は、良い月、という意味をもつ。典拠となった万葉集の序文そのものは九州大宰府で生まれた歌で、地域も広い。地方の文化、地方の時代になるということを表したのではないか」と話した。

*内容を追加しました。

[東京 1日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中