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日本経済

平成における消費者の変容:経済不安でも満足度の高い若者

2019年3月29日(金)18時00分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

消費者庁「平成28年度消費者意識基本調査」によると、現在お金をかけているもののうち「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」の割合は、15~19歳(34.6%)で最も高く、20代(26.6%)が続く。一方で30~70代は15%以下である。

モノを買う場所も変化している。小売業の売上高は、1990年では百貨店が最も多かったが、1990年代半ばにスーパーが、2009年にはコンビニが上回り、近年はネット通販の伸びが著しい(図表10)。

さらに、ネットやスマホの浸透で、足元ではシェアリングエコノミーが急成長し、これまで事業者が消費者へ提供してきたモノやサービスが、消費者間で直接売買できる環境が整いつつある。

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6――おわりに~若者の雇用安定化と可処分所得の引き上げ、社会保障制度の持続性確保を

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景気低迷の中で生まれ育ってきた今の若者だが、実は目先の収入はバブル期より多く、「お金がないわけではない」。しかし、貯蓄志向が高く、堅実かつ合理的な消費者へと姿を変えている。それは、不景気の中で培われた節約志向に加えて、技術革新やデフレの恩恵を受けて、「お金を使わなくても楽しめる」「お金を使うことが必ずしもすごいことではない」という価値観が形成されたためだ。

このような価値観を持つ若い世代の消費を増やすことは簡単ではないだろう。しかし、節約志向に起因する消費抑制意識を緩和することは、比較的容易なのではないか。

目先の収入は案外あっても、若い世代ほど将来の見通しは立ちにくい。不安定な立場で働く非正規雇用者が増え(図表11)、正規雇用者と非正規雇用者の年収差は、年齢とともに拡大する(図表12)。正規雇用者でも安泰ではなく、10年前と比べて賃金カーブは低下し、特に30~40代で平坦化している(図表13)。この平坦化した部分を推計すると、およそ1千万円にもなる。さらに、少子高齢化による社会保障の世代間格差も広がる。

裏を返すと、雇用が安定し、社会保障制度の持続性が確保され、将来に向けて明るい見通しを立てられるようになれば、節約志向に起因する消費抑制意識は緩和される可能性がある。

若者の経済基盤の安定化に向けて、1つ1つの課題を丁寧に解決していくことで、若者は、堅実かつ合理的な消費態度を持ちながらも、ちょっとした贅沢を楽しむようになるのかもしれない。


*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。

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久我尚子
ニッセイ基礎研究所
生活研究部 主任研究員

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