最新記事

環境問題,特集プラスチック危機

またもプラゴミがクジラの命奪う 胃に40Kgのゴミ飲み込み餓死

2019年3月20日(水)19時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

死亡したクジラの胃袋からは40kgものプラスチックゴミが出てきた。(c) Panay News - facebook

<世界最大の哺乳類にとって一番の敵はシャチやサメではなく、人間が捨てたゴミだった>

フィリピン南部ミンダナオ島のダバオ南東にあるコンポステラ・バレー州の海岸で衰弱したクジラが発見され、翌日に死亡。解剖した結果、胃の中から約40キログラムのプラスチックゴミが発見、回収された。プラゴミで胃が一杯となったためにエサを食べられなかったことで衰弱、死亡したとみられている。

このクジラは3月15日に同州海岸の波打ち際で弱っているところを地元民が発見。ダバオの環境保護団体などが駆けつけたものの16日に死亡が確認されたことが18日に発表された。フィリピン地元各紙などが伝えた。

地元漁業関係者や環境保護団体などによると死亡したクジラはまだ若いアカボウクジラで全長約4.6メートル、体重は約500キログラムという。

ダバオに拠点のある環境団体「Dボーンコレクター博物館」のダレル・ブラッチェリー館長はAFP通信などに対して「クジラの死因は胃の中に堆積したプラスチックゴミにより、エサを食べることができなかった餓死とみられる」との見方を明らかにした。

クジラは胃の中でエサを消化するための「胃酸」のようなものを分泌して分解するが、プラゴミは分解させることができずに、胃の中に残り次つぎと堆積し、これが続くと「胃酸」の影響で胃に穴が開くことや、水分の摂取が難しくなり脱水症状に陥ることもあるという。

米袋やナイロンロープ、スナック菓子袋も

環境保護団体などによる解剖の結果、このアカボウクジラの胃からは大型の米袋16個、バナナ農園で使用するようなバッグ4個、ショッピング袋やスナック菓子の袋類というプラゴミに加えてナイロン製のロープなど合計40キログラムのゴミが発見、回収された。

ブラッチェリー館長は「我々は過去10年間で61頭のクジラやイルカを解剖してきたが、今回のケースは最も(プラゴミが)多いといえるだろう。非常に不快で胸が痛む」と話している。

フィリピン南部で発見され、胃袋から40kgのプラゴミが見つかったクジラ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 5
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中